独居父からの提案「実家を売るから、一緒に暮らさないか?」
「それなら、一緒に暮らさないか?」
それは、父からの思いがけない言葉でした。
有志さん(仮名・39歳)の父(76歳)は、4年前に母を亡くして以来一人暮らしを続けています。家事がまったくできない父を心配した有志さんは、車から30分程度の距離に住んでいることもあり、頻繁に実家を訪れていました。
しかし高齢になり、ここ2年ほどは孤独や身体の衰えへの不安が募っていたようです。 有志さんが3,800万円の中古マンションを購入しようとしていた矢先、同居の提案をしてきたのです。
「うちを売れば3,000万円近くになる。お前たちの資金を足しにして一戸建てを買い、同居するのはどうだろう。自分は1部屋あればいいし、死後はその家を譲る。年金から生活費も出す。悪い話じゃないと思うんだが……」
元々購入を検討していたマンションは68平米の3LDK。男児2人と暮らすには、成長も考えると手狭感は否めません。しかし、自身の年収は500万円、妻はパートで100万円程度。言うなれば妥協の上での選択だったため、予算内で一戸建ての広い家に住めることは、大きな魅力です。
「父さんがそういうなら、ちょっと奥さんに聞いてみるよ」
妻の絵美さんは日頃から父のことを気にかけてくれ、関係は良好でした。OKしてくれるかもしれない、そう思ったのですが――。
妻の猛反対も、まさかの展開へ
結果、絵美さんは猛反対。どれだけ狭くても、家族水入らずで暮らしたいと強く訴えられたのです。
父がプライドを捨てて頼んできたことは痛いほど分かりましたが、自分の家庭を守るため、断る決断をしました。そして父は「そうだよな、わかった」と静かに受け入れたのです。
しかし、その後、思わぬどんでん返しがありました。話を聞いた有志さんの姉が、「資金を出してくれるなら、うちを二世帯に建て替えよう」と同居を買って出てくれたのです。
「嫁にいった娘と一緒に暮らすなんて、考えもしなかったが……ありがたいよ」
父も快諾し、話は一気に解決へと向かいました。結果として、実家という資産は姉に渡ることになりましたが、有志さんは罪悪感から解放され、晴れ晴れとした気持ち。後悔はまったくないといいます。

