(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもが成人しても実家で暮らし続けることは、もはや珍しいことではありません。経済的な事情や職場との近さ、親の見守りなど、理由は家庭によってさまざまです。とはいえ親が定年を目前にすると、同居する子どもへの思いは複雑になります。追い出したいわけではない。しかし、このままでよいのか。そんな迷いを抱える親もいます。

「一人暮らし、思ったよりお金かかるんだね」…息子が見た現実

健太さんは不満そうでした。

 

「別に迷惑かけてるつもりはないよ」

 

その言葉に、修一さんはすぐに言い返しそうになりました。しかし、感情的になれば話はこじれるだけです。

 

「迷惑かどうかじゃない。お前がここで暮らすにもお金がかかっている。そのことを一緒に考えたいんだ」

 

美奈子さんは、食費や光熱費、固定資産税、修繕費を書き出した紙を健太さんに見せました。健太さんは最初こそ黙っていましたが、数字を見るうちに表情を変えました。

 

「そんなにかかってたの?」

 

「全部を負担してほしいわけじゃない。でも、親の収入が下がる前に、家族の中で曖昧にしてきたことを決めたいの」

 

美奈子さんがそう言うと、健太さんは小さくうなずきました。

 

話し合いの結果、健太さんは家に入れるお金を5万円に増やし、半年以内に一人暮らしの費用も調べることになりました。すぐに家を出るわけではありません。それでも、自分の生活費を把握することから始めると決めたのです。

 

数週間後、健太さんは不動産サイトを見ながら言いました。

 

「一人暮らしって、思ったよりお金かかるんだね」

 

修一さんは苦笑しました。

 

「だから今のうちに考えろって言ってるんだ」

 

親が子に自立を求めることは、冷たいことではありません。むしろ、親が元気なうちにお金や住まいの現実を共有することは、将来の共倒れを防ぐためにも必要です。

 

親子であっても、それぞれの生活には責任がある。そんな当たり前のことを、定年前の今だからこそ、修一さんは話しておきたかったのです。

 

 

 

 

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