「一人暮らし、思ったよりお金かかるんだね」…息子が見た現実
健太さんは不満そうでした。
「別に迷惑かけてるつもりはないよ」
その言葉に、修一さんはすぐに言い返しそうになりました。しかし、感情的になれば話はこじれるだけです。
「迷惑かどうかじゃない。お前がここで暮らすにもお金がかかっている。そのことを一緒に考えたいんだ」
美奈子さんは、食費や光熱費、固定資産税、修繕費を書き出した紙を健太さんに見せました。健太さんは最初こそ黙っていましたが、数字を見るうちに表情を変えました。
「そんなにかかってたの?」
「全部を負担してほしいわけじゃない。でも、親の収入が下がる前に、家族の中で曖昧にしてきたことを決めたいの」
美奈子さんがそう言うと、健太さんは小さくうなずきました。
話し合いの結果、健太さんは家に入れるお金を5万円に増やし、半年以内に一人暮らしの費用も調べることになりました。すぐに家を出るわけではありません。それでも、自分の生活費を把握することから始めると決めたのです。
数週間後、健太さんは不動産サイトを見ながら言いました。
「一人暮らしって、思ったよりお金かかるんだね」
修一さんは苦笑しました。
「だから今のうちに考えろって言ってるんだ」
親が子に自立を求めることは、冷たいことではありません。むしろ、親が元気なうちにお金や住まいの現実を共有することは、将来の共倒れを防ぐためにも必要です。
親子であっても、それぞれの生活には責任がある。そんな当たり前のことを、定年前の今だからこそ、修一さんは話しておきたかったのです。
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