本連載は、金融情報全般を扱う大手情報配信会社、株式会社フィスコ監修の『FISCO 株・企業報 2017年春号 今、この株を買おう』(実業之日本社)の中から一部を抜粋し、中国経済の危うさと、日本経済に与える影響、世界経済への波及などを検証していきます(執筆:株式会社フィスコ所属アナリスト・田代昌之氏)。

経済の実態が暗い闇に包まれている中国

世界第2位のGDPを誇る中国。しかし、その経済の実態は暗い闇に包まれている。公表される経済指標は中国共産党の赤いベールに隠され、実情がなかなかつかめない。

 

さまざまな角度から中国経済の真相を探り、中国経済崩壊に向けてのシナリオはいかなるものか世界・日本に及ぼすインパクトも含め、検証する。

(※通貨換算は当時の数字です)

製造業コスト増、止まらない資金流出が中国経済を圧迫

中国はこれまで、膨大な労働力人口と安い人件費によって、世界中の製造業の製造拠点として経済発展をとげてきた。

 

しかし、「世界の工場」とも言われた中国国内の賃金水準は年々上昇しており、地価も上昇。製造業のコスト増が顕著になっている。そのうえ、食品衛生や知的財産の流出といったリスクがクローズアップされ、さらに不安定な人民元の存在もあって、生産拠点としての中国に対する需要低下に歯止めがかからなくなってきている。

 

 

さらには、習近平政権が掲げた「中国の夢」に端を発する対外強硬路線で生じた地政学上の様々な問題、そして各国が進めるリスクヘッジであるチャイナプラス1政策が、それに拍車をかけている面も否定できない。

 

加えて、預金や貸出を主として、中国からの資金流出は加速している。中国経済悪化を懸念した金融機関のロールオーバーや新規貸出の減少、個人の資金流出が増加しているのだ。

 

また、2008年に政府が実施した4兆元の景気刺激策を引き金に、国内の供給過剰感が鮮明となっており、今後どこかの時点で資本ストック調整が大規模に生じる見込みだ。

見逃せない「事実隠蔽」と「偽装数値」の問題

これまでの中国の高成長は、一貫して投資が主導してきた。しかしそうした投資主導型の成長が足元では限界に達しており、個人消費主導型の成長モデルへの転換が期待されている。

 

 

また、格差是正のための労働分配率の向上や、企業優遇施策の見直し、更なる投資抑制の実施など、基本的な構造改革を推進していくことが重要と指摘されている。しかし、これらは決して容易なことではない。

 

その背景には社会保障制度への不安や、資金の流動性への制約といった問題がある。社会保障への不安から、個人の資金は貯蓄や現金の形で留保される傾向が強くなり、消費へと回りにくい。さらに、現状では個人での資金の借入は困難なため、生涯所得に見合った消費より少ない額しか消費できない、というのが中国の現実なのだ。

 

中国当局はこうした状況を真摯に直視し、解決策を模索していくべきであるはずなのだが、そうした動きはなかなか見えてこない。逆に、誤解を恐れずに言うならば、経済減速の事実を隠蔽するような動きすら感じられる。それが如実に表れているのが、GDPや外貨準備、個人消費といった、政府発表の数字の信憑性の低さである。

 

中国経済の現状について、その実態を明らかにするために、これら政府発表の数値について、あらためて検証してみると、その「危ない」経済の一端が垣間見えてくる。

 

<中国経済崩壊へのカウントダウン>

 

①経済成長の鈍化

 

過去10%前後の成長を遂げてきた中国は、経済成長の鈍化が鮮明となり、2015年GDP成長率は7%を割り込み、現在は6%台で推移。固定資産投資と輸出がスローダウンした一方、消費拡大が景気を下支えする構図が足もとでは続いているとされているが、消費拡大の見通しは不透明。

 

●今後のGDP成長率は、2~3%に低下との予測も。

●生産年齢人口の減少や賃金上昇による輸出競争力低下が成長を下押し。

 

②資金の海外流出が加速

 

預金や貸出を主として中国からの資金流出は加速。

 

●中国経済悪化を懸念した金融機関のロールオーバーや新規貸出の減少、個人の資金流出が増加。

 

③外貨準備高の下落

 

世界最大と言われる外貨準備高は2014年をピークに急減。

 

●2014年6月(4兆ドル)がピークで、2015年9月には、3.7兆ドルと3,000億ドル減少。

●現状の外貨準備高下落ペースが続く場合、2017年6~9月あたりにIMF等が指摘する外貨準備高の基準2.8兆ドルを下回る見込み。

 

④不良債権の増加

 

不良債権は190兆円に達するという指摘もあるなど経済状況は悪化。

 

●2016年3月末時点で商業銀行が抱える不良債権残高は1兆3,921億元、不良債権比率は1.75%と7年ぶりの水準まで上昇。

●2016年4月に国際通貨基金(IMF)が公表した報告でも、事業収益が支払利息を下回るような潜在的に貸し倒れリスクを抱える債権が多いと指摘。

 

FISCO 株・企業報 2017年春号 今、この株を買おう

FISCO 株・企業報 2017年春号 今、この株を買おう

株式会社フィスコ

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