怒りで我を忘れました…はじまりは「自己啓発セミナー」。意気投合した30代男性の誘いで100万円で買った、〈誰でも億り人になれるUSBメモリ〉の驚愕内容【弁護士が解説】

怒りで我を忘れました…はじまりは「自己啓発セミナー」。意気投合した30代男性の誘いで100万円で買った、〈誰でも億り人になれるUSBメモリ〉の驚愕内容【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「老後2,000万円問題」が大きな世論を巻き起こして以降、国が推進する「貯蓄から投資へ」の風潮はかつてないほど強まっています。こうした世相を反映してか、SNSやYouTube、さらにはリアルなコミュニティでも、老後資金の勉強会、投資・資産運用の勉強会やセミナーが流行っています。今回は、詐欺、悪質商法の被害救済に注力する市川巧弁護士が、このような人の不安や願望につけ込んだ事例を紹介します。

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必ず勝てるFX攻略講座の内容

後日、翼さんの自宅にレターパックが届きました。中身は、1本のUSB。翼さんが勢い込んでUSBをノートパソコンに挿入すると、そこに格納されていたのは、ローソク足チャートの見方などの解説が書かれた、いくつかのWordファイルでした。

 

早速、翼さんはネット銀行でFX口座を開設して、そのファイルに書かれた指示通りにFX投資を開始します。しかし、結果は散々なもの。まったく勝てないまま取引を繰り返し、あっという間に100万円の損をしてしまいました。

 

愕然とした翼さんがインターネットで検索してみると、USBに入っていた情報は、専門サイトやブログなどで誰でも無料で手に入れられる内容と大差がないことが判明します。頭にきて、深夜にもかかわらず、太郎さんに文句のLINEを送りました。しかし、太郎さんはまたしても謝るでもなく、「気持ちを切り替えて、別の方法を試してみよう」といいます。

 

翼さんは、太郎さんの言い草にさすがに呆れました。一方で、これまでに支払った副業授業料の50万円、FX受講料100万円、そして、FXの取引で失った100万円の損——計250万円もの損失を前に、理性は麻痺。「次こそは資産を増やせるかもしれない」と、藁にもすがる思いで、3度目のセミナーへ向かってしまったのです。

 

「これはもう明らかに…」

翼さんが参加したのは、いわゆる「マルチ商法(マルチレベルマーケティング)」の勧誘セミナーでした。自分の下に何人の「枝」を付けられるかで報酬が決まる、ねずみ講さながらの仕組みです。「先に始めた者が、後から始めた者を養分とし、利益を吸い上げる構造」を目の当たりにした翼さんは、ようやく自分が置かれている状況を理解しました。

 

太郎さんに対する怒りで、正気を失いそうになりながら、セミナー会場を後にします。家に着くなり、翼さんは太郎さんに電話を掛け、我を忘れて怒鳴りました。

 

「俺が払った金額のうち、いくらかはお前に流れているんだろう! いくらもらったのかいえ!」

 

あまりの剣幕に、太郎さんは白状しました。副業指南の講座でも、FX攻略法でも、翼さんが支払った金額の20%を紹介料として本部から受け取ったそうです。

 

こうして翼さんは、老後資金2,000万円を貯めるどころか、わずか数ヵ月のあいだに250万円もの大金を失う結果となりました。残ったのは、クレジットカードの債務と、太郎さんに対する恨みだけです。

弁護士が警告する「うまい話」の裏側

とにかく、他人から投資や資産運用の話を持ち掛けられても、安易に乗らないこと。世の中うまい話はありません。悪知恵に長けた者、他人を食い物にしても良心が痛まない者たちが、弱き者から収奪しようと虎視眈々と狙っています。まずは「怪しい」と気づく自衛の意識を持つことが大切です。

 

では、翼さんのようにすでに高額な契約を結び、数ヵ月が経過している場合、法的に打てる手はないのでしょうか。まだ残されている可能性のある救済策を解説します。

 

1.書面不備によるクーリング・オフの継続

訪問販売や副業商法のクーリング・オフ期間(8〜20日間)は、法律で定められた項目が正しく記載された「法定書面」を受け取った日からカウントが始まります。悪質な業者の書面には不備があるケースがあり、その場合は期間がスタートしていません。つまり、契約から数ヵ月が経っていても解約・返金を主張できる可能性があります。

 

2.消費者契約法による「契約取消」

講師が口にした「必ず勝てる」「必勝法がある」という文句は、法律が禁じる「断定的判断の提供」や「不実告知」に該当します。こうした違法な勧誘による契約は、誤認に気づいたときから1年間(契約から5年以内)であれば、取り消すことができる場合があります。

 

最もやってはいけないのは、諦めてLINEの履歴を消したり、怒りに任せて書類を捨てたりすることです。時間が経つほど業者が逃げ隠れするリスクが高まります。相手とのトーク履歴、契約関連の書類、届いたUSBや明細などはすべて証拠として保存してください。そのうえで、速やかに弁護士や消費生活センター(消費者ホットライン「188」)へ相談を持ち掛けてみましょう。

 

 

市川 巧
弁護士
貝坂通り法律事務所

 

 

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