(※写真はイメージです/PIXTA)

多くのシニア世帯が直面している「年金生活の赤字」という現実。日々のやりくりのなかで、子どもの存在やその収入を、無意識のうちに自分たちの老後の「命綱」にしてはいないでしょうか。本記事では佐藤正夫さん(仮名)の事例とともに、FP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が老後設計における重要な視点について解説します。※本記事は実話をベースに構成していますが、プライバシー保護のため、個人名や団体名、具体的な状況の一部を変更しています。

親子を引き裂いた手紙

実は、正夫さん夫婦は、結婚後も娘は夫とともに一緒に暮らしてくれるものだと思い込んでいました。婿となる男性は地元を離れて一人暮らしをしていました。そのため、一緒に暮らしたほうが経済的にも楽だろうからと解釈していたのです。

 

しかし、その前提は夫婦だけの身勝手な思い込みに過ぎませんでした。式翌日、美咲さん夫婦が挨拶のために実家を訪れると、前日の不穏な空気を引きずったまま、話し合いは瞬く間に激しい口論へと発展します。

 

「親を見捨てる気か!」とまでいわれ、美咲さんも我慢の限界でした。結果として、この日を境に親子関係は決裂。前日までの感動は、一夜にして修復不可能な「親子の断絶」へと変わってしまったのでした。

老後設計を「子どもありき」で考えることで起きる悲劇

総務省統計局「家計調査(2025年)」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、収入は月に約25万円ですが、消費支出は約28万円。つまり、多くの世帯で赤字の家計となっています。

 

今回の正夫さん夫婦にとっての問題は、娘の収入もあてにしながら老後の生活を送り、「娘が一緒に住んでくれる」という前提で、娘夫婦に依存した将来を考えてしまったことです。

 

子どもの結婚は、本来なら新しい人生の門出を祝う喜ばしい出来事でしょう。しかし、その裏で親が自分たちに都合よく解釈してしまうと、それがきっかけで親子の関係を壊してしまうケースもあります。

 

もちろん親子の同居は、双方が望んでいるのであれば、それは生活費や住居費を抑える有効な手段ともいえるでしょう。しかし、それが前提になってしまうと、子どもの人生を縛ることに繋がります。親には親の人生があり、子どもにもまた、子どもの人生があります。本来は双方が経済的に自立したうえで、双方の意向が合えば必要に応じてお互いを支え合える関係が理想です。

 

そのためには、まず現在の収入と支出を見える化する視点が欠かせません。老後資金が十分でなくても、年金だけでは毎月いくら不足するのか、資産は何年持つのかを試算し、不足するようなら働く、支出を見直す、年金の繰下げ受給を検討するなど、できる対策はいくつもあります。

 

自分たちの生活を自分たちで成り立たせることができてこそ、子どもとも対等な関係を築くことができるものです。自分たちでできることをせず、「子どもがなんとかしてくれる」という考えになれば、その期待はやがて依存へと変わり、親子関係そのものを壊してしまうことになりかねません。

 

子どもの収入に依存することなく、自分たちの人生を自分たちで支えられる老後を目指すことが、良好な関係を維持するために重要なことです。

 

 

小川 洋平

FP相談ねっと

ファイナンシャルプランナー

 

 

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