5月も引き続き用いられた「持ち直しの動き」というワード
5月の「景気ウォッチャー調査」では、現状判断DIが前月差2.8ポイント上昇し43.6になりました。現状判断DIは中東情勢を受けて3月に急落、4月もさらに低下したものの、その後やや持ち直したかたちです。
現状判断DI(季節調整値)は3月~5月の3ヵ月すべてで、ロシアのウクライナ侵略が始まった22年2月の37.7は下回ってはいません。中東情勢などの要因を除くと、景況感が底堅いことを示唆していると思われます。
また、現状水準判断DI(季節調整値)は前月差2.1ポイント上昇の44.5となりました。現状判断DIより0.9ポイント高い水準になります。
先行き判断DI(季節調整値)は、前月差1.3ポイント上昇の40.7と2ヵ月連続で上昇しました。
なお、原数値でみると、現状判断DIは前月差1.5ポイント上昇の43.1となり、先行き判断DIは前月差1.9ポイント上昇の40.9となりました。
5月の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方に関する内閣府の判断は、「景気は、中東情勢によるマインド面の下押しを中心に、このところ持ち直しの動きに弱さがみられる」と4月と同じになりました。3月では2月までの「景気は、持ち直している」から「景気は、中東情勢によるマインド面の下押しを背景に、このところ持ち直しの動きに弱さがみられる」に変わりました。4月で「背景」が「中心」に変更されましたが、「持ち直しの動き」というワードは5月も引き続き用いられました。
また、先行きについては、5月は「中東情勢による不透明感がみられる」で、3月・4月に続き3ヵ月連続で同じ表現になりました。2月までは5ヵ月連続で「価格上昇の影響等を懸念しつつも、持ち直しが続くとみられる」でした。「持ち直しが続く」という言葉が消えています。
沖縄の百貨店・経営担当「インバウンドや家族連れの来店多い」
地域別にみた5月の現状判断DIでは沖縄が53.2と4月の50.8から2.8ポイント上昇し、25年4月以降14ヵ月連続で景気判断の分岐点50を上回りました。地域別では唯一50台です。沖縄の百貨店・経営担当は「インバウンドや家族連れの来店が多く、店舗周辺の人流が増加している」とコメントしていました。
前月4月の先行き判断DIでは沖縄も47.8になり、21年9月以降55ヵ月連続続いた50超が終了し全地域が50割れになりました。しかし、5月は50.3と地域別では唯一50台に戻りました。
近畿の百貨店・マネージャー「シールやカプセルトイなどの文具などが売上に大きく貢献」
分野・業種別の5月現状判断DIでは家電量販店が69.2と3ヵ月連続で50超になりました。北関東の家電量販店・企画担当の「新たな省エネ基準の開始を背景として、エアコンの売上が特に大きく伸長しており、家電全体の販売量、売上をけん引している」というコメントがありました。
また、百貨店が55.7と3ヵ月ぶりの50超になりました。近畿の百貨店・マネージャーの「売上の推移は全体的に好調であるが、特にシールやカプセルトイなどの文具やホビー関連が売上に大きく貢献している。前年の大阪・関西万博の開催は、当店のような地方店には悪影響を及ぼしていた可能性もあり、今月の売上は前年比で約5%増加している」というコメントがありました。
甲信越の観光型旅館・経営者「混雑日の料金、前年よりも高めでも完売」
5月の「ゴールデンウィーク」関連現状判断DIは51.7と景況感の判断の分岐点の50超に。言及したウォッチャーは102人に増加。
5月の現状判断で「ゴールデンウィーク」に言及したウォッチャーは102人に増加し、現状判断DIは51.7と景況感の判断の分岐点の50超に上昇しました。甲信越の観光型旅館・経営者の「今年のゴールデンウィークは5連休となり、例年よりも客が多かった。また、連休中の混雑日の料金を前年よりも高めの設定にしたが、完売した。連休中は首都圏からの客が多く、首都圏は景気が良いとみられる」というコメントがありました。
東京都の百貨店・総務担当「1度上昇した物価が下落に転じるまでには相当の時間を要する」
5月の「景気ウォッチャー調査」では「中東」に関するコメントをした人が現状182人、先行き372人と4月から減少しました。4月は現状が218人、先行きは402人でした。5月の「中東」関連現状判断DI35.9と4月の30.6より5.3ポイント上昇しました。また、「中東」関連先行き判断DIは34.1と4月29.9より4.2ポイント上昇しました。
中東情勢の影響に対する過度な不安はいったん落ち着いた状況ですが、ナフサや資材の供給不安は高まってきています。「ナフサ」関連のコメント数は、現状63人と4月13人から50人増加、先行きは71人と4月26人から45人増加しました。
5月の「ナフサ」関連現状判断DIは34.9と4月32.7より2.2ポイント上昇しました。一方、「ナフサ」関連先行き判断DIは32.4と4月34.6より2.2ポイント低下しました。「地政学的リスクが物価上昇に直結しているように見受けられる。今後、仮に解決の兆しがみえてきたとしても、1度上昇した物価が下落に転じるまでには相当の時間を要すると予測される。消費の観点から見た景気動向について、先行きの明るさは余り見受けられない」と東京都の百貨店・総務担当のコメントがありました。
東北の農林水産業・従業者「米の店頭価格が下落傾向」
4月の「価格or物価」関連判断DIは現状と先行きが各々、34.3,32.2と低い水準ながら、3月の34.1,31.7に比べて下げ止まり、景況感悪化が一服していましたが、5月もその流れが続きました。5月の「価格or物価」関連現状判断DI35.6、先行き判断DIは33.5になりました。「米の店頭価格が下落傾向にある」という、東北の農林水産業・従業者のコメントがありました。
コメントしたウォッチャー数を先行き判断でみると、2月の266人から3月は541人に大幅に増加し、関連DIの低下と回答人数の増加の両面で、3月の景況感の足を引っ張りましたが、その後は4月446人、5月は402人でやや落ち着いてきました。同時に、関連DIも持ち直してきました。
東北のスーパー・店長「「生鮮食品、飲料の売行きは良い」
5月の「気温」関連現状判断DIは52.5と、4ヵ月連続で判断の分岐点の50超になりました。「生鮮食品の売行きは良く、気温の上昇により飲料も売れている。また、自治体が発行する商品券の効果も大きい」という、東北のスーパー・店長のコメントがありました。5月の「気温」関連先行き判断DIは51.6で2ヵ月ぶり50超になりました。
観光名所・従業員「インバウンドの多様化と、根強い国内の観光、贈答需要が維持」
5月の現状判断DIは53.6と4月の50.5から3.1ポイント上昇し、3ヵ月連続で50超になりました。「ここ数ヵ月、毎月の利用者数が過去最高を更新し続けている。中国からのインバウンドこそ減少が続いているものの、それ以外の国や地域からのインバウンド及び国内観光客が好調なことから、中国のマイナス分を補って余りある状態となっている。さらに、今後の物価上昇を見越して、今年度初めから値上げした商品やフードメニューについても、値上げ前と変わらない注文があり、客単価の上昇につながっている」という北海道の観光名所・従業員のコメントがありました。
一方、先行き判断DIは51.4で3ヵ月ぶりに50超になりました。「欧米圏からのインバウンドは今後も安定して見込めるほか、中国からのインバウンドの回復も本格化しつつある。現在のインバウンドの多様化と、根強い国内の観光、贈答需要が維持されることで、今後数ヵ月は高い売上水準を継続できるとみている」という北陸の商店街・代表者のコメントがありました。
近畿の[球場]経理担当「夏休み期間となるため、多数の来場者を見込んでいる」
2025年の今年の漢字になった「熊」ですが、冬眠の時期の2月、3月のコメントはありませんでした。しかし、4月に現状、先行きともに再び登場しました。5月は現状で3人、先行きでコメントした人はいませんでした。
現地で6月11日開幕の「サッカーワールドカップ」北中米大会に関しコメントした人は4月にはいませんでした。5月は先行き判断で1人だけでした。北海道の家電量販店・経営者が「今後も、エアコンやLED照明の販売は好調に推移することになる。また、サッカーワールドカップが開催されることで、テレビなどの販売が増えてくることを期待している。ただし、ナフサ問題の影響で、7月以降、部材などの調達難や価格高騰が生じることを懸念している」とコメントしました。
先行きの明るい材料をみると、「ボーナス」関連先行き判断DIが61.4、「夏休み」関連先行き判断DIは51.4とどちらも分岐点の50超です。「プロ野球の交流戦や人気球団の試合のほか、人気グループのコンサートが予定されている。夏休み期間となるため、多数の来場者を見込んでいる」というコメントが、近畿のその他レジャー施設[球場]の経理担当からありました。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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