前回は、円滑な事業承継のための「会計」把握の重要性について説明しました。今回は、自社の業績分析では「部門別」の考え方を徹底すべき理由を見ていきます。

不採算ラインに巨額の設備投資を行ってしまったら…

業績分析を進めるにあたって、部門別の考え方を徹底することが重要です。たとえば、商品別、事業別での細かな分析がそれにあたりますが、特に製造業であれば「ライン」ごとに区切る必要が出てくるのです。

 

ラインごとに製作するものが違えば、当然ラインごとに老朽化の度合いも異なってきます。もちろん、採算性も違ってくるのはお分かりいただけることと思います。

 

企業にとって一番不幸な状態をもたらすパターンは、実は設備投資の段階で起こります。もし、不採算ラインへの設備投資を銀行から多額の借り入れで行ってしまったとしたら・・・。考えるだけで恐ろしいことなのは言うまでもありません。

 

ところが、普段からラインごとの業績分析の習慣がなかったとすれば、そんなケースは容易に起こり得ます。その結果は後に残る多額の借金以外にはありません。

事業承継の機会に「業績の把握方法」の見直しを

古くなっているラインを設備投資で刷新したい――「全体として儲かっている」から、そのための融資は銀行が用意してくれる。この流れが実は大きな落とし穴なのです。もし、これまでにその点を十分に考慮せず業績の把握をしていたとすれば、ぜひ、この事業承継の機会に見直しを求めるべきです。

 

部門ごとの業績分析は、確かに手間のかかることのように思われます。しかし、専門家である会計事務所にとっては、種々の事業現状分析作業のうちで、最も重要な作業とも言えます。さらに、一旦、この部門に分けた業績分析が形になれば、承継のための今後の事業計画の検討にはそれほどの困難はありません。

本連載は、2016年6月24日刊行の書籍『たった1年で会社をわが子に引き継ぐ方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

浅野 佳史

幻冬舎メディアコンサルティング

近年、日本の多くの中小企業が承継のタイミングを迎えています。承継にあたっては、親から子へと会社を引き継ぐパターンが多いのですが、親子間だからこそ起こるトラブルがあることを忘れてはいけません。 中小企業白書による…

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