前回は、専門家・専門機関が活用している中小企業のデータベースについて解説しました。今回は、円滑な事業承継のための「会計」把握の重要性について見ていきます。

営業損益と減価償却費を足した値がマイナスなら・・・

具体的にそもそも、会社は利益をどのくらい上げられているのかを、今一度確認してみましょう。

 

1年間の事業活動で獲得できるキャッシュは、営業利益と減価償却費の合計で計算できます。通常は、このキャッシュを本来必要な投資活動(設備購入など)と財務活動(借入金返済など)にあてるのが大前提です。

 

その観点でみると、決算書の営業損益と減価償却費を足した値がマイナスになってしまった企業は、今すぐ緊急手術が必要ですし、廃業や事業縮小を視野に検討したほうがよいでしょう。

 

万一、そのような状態であれば、事業を続ければ続けるほど借入金が膨らむということですから、この先いつまで会社が継続できるか分からない、倒産と隣り合わせの状態です。それを後継者に承継してしまうのでは、あまりに酷なこととなってしまいます。少なくともこの段階で問題点をあぶり出しておかなければ、事業承継をする意味自体が揺らぎかねません。

 

さらに言うなら、会社は廃業の道へと進んでいるのが実情とさえなります。現段階で業績に不安があれば、すぐに会計士に相談してください。一方、営業損益と減価償却費を足した数値はプラスではあるが、事業継続に必要な設備更新などの資産を買えるほどの体力がない、ましてや借入金を返済することもできない、という場合もやはりすぐに改善措置を行うべきです。

 

また、事業継続に必要な資産を買うこともでき借入金を返済することもできているが、思ったほど借入金が減らないという程度であれば、3〜5年かけて経営体制を改善していけば、すぐに「ピカピカ」の会社になるはずです。

現状における自社の事業の問題点が把握可能

自社の会計処理はどのように行われているでしょうか。日本税理士連合会などが公表する中小企業における会計のルールである、「中小企業の会計に関する指針」(中小指針)や「中小企業の会計に関する基本要領」といったものはご存じだと思われます。もしご存じでない場合には、税理士に指導してもらい、必ず、こうした会計ルールのもとで会計処理を行うように改めなければなりません。

 

それによって経営状況を的確に把握することができますし、外部関係者への情報提供においても有用なツールとすることが可能です。こうした会計ルールに沿った会計処理で経営状況を把握していれば、次に過年度の財務諸表と直近の財務諸表とを比較します。

 

これにより、現状において自社の事業のどこが問題なのかが明らかになるはずです。そこでは問題となってしまっている理由を追究することで、今後の改善計画につなげるべきです。

 

一般的に、会社の業績を知ることは財務状況の推移を知ることだけで終わってしまうことが多いように思われます。ただし、本来はそれを部門別等に切り分ける作業が行われなければその意義は半減してしまいます。これについては私たち専門家がもっと積極的にアドバイスし実施していかなければならないことと、自戒も込めて強く思うところです。

本連載は、2016年6月24日刊行の書籍『たった1年で会社をわが子に引き継ぐ方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

浅野 佳史

幻冬舎メディアコンサルティング

近年、日本の多くの中小企業が承継のタイミングを迎えています。承継にあたっては、親から子へと会社を引き継ぐパターンが多いのですが、親子間だからこそ起こるトラブルがあることを忘れてはいけません。 中小企業白書による…

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