マンションデベロッパーの多くは、「マンションは新建材で建てるもの」と認識しています。しかし、自然素材を内装に使用すると、快適な生活空間を確保することが可能です。本連載では、マンションの内装に自然素材が使われない理由を見ながら快適なマンションについて考えていきます。

落ち着いた空間、快適な室内環境を提供できる自然素材

「自然素材で内装する快適な住まいを提供したい」

 

夏場にサラッと踏み締める無垢材の床の気持ちよさ、職人の手わざで仕上げた珪藻土の壁が室内の湿気を吸湿し、爽やかな空気の肌触りを感じて過ごす。

 

そんな感覚が普通に味わえる暮らしをマンションでもご提供していきたいという思いを抱きながら、「エコヴィレッジ」という分譲マンションの設計を行ってきました。さかのぼること約15年、エコヴィレッジの原型は自然素材のオプション採用からスタートし、自然素材の特徴が生きる加工資材を採用してきました。

 

その過程で念願だった自然素材そのものを内装に採用する技術や勘が備わり、現在のエコヴィレッジでは、無垢材のフローリングを床に張り、壁は珪藻土を塗り仕上げることができるようになりました。今では1800戸以上のエコヴィレッジをご提供させて頂くまでになっています。

 

自然素材は傷や汚れがつきやすく、一般の方から見れば、引渡し時の仕上がりレベルは新建材のマンションと比べると見劣りするかもしれません。しかし自然素材の内装は、光りの反射の仕方も新建材のキラキラ感とは異なり、しっとりした感じを演出します。もちろん空間の落ち着きとは別に、夏の過剰な湿度を抑えるとともに、冬の乾燥や結露が少なくなるなど、快適な室内環境を提供するために必要不可欠な素材ですが、これまでのエコヴィレッジを様々振り返ると、そのことを確信することができます。

傷や汚れに強く、美しさを保てる「新建材」だが・・・

自然素材の内装は、意識の高い方の中では戸建ての注文住宅やリノベーションと呼ばれる中古マンションのフルリフォームなどでは当たり前になりつつあります。無垢材のフローリングや珪藻土の壁など、今や珍しくありません。

 

一方、新築マンションでは、いまだにビニールクロスや合板のフローリングといった工業製品である「新建材」が使われています。自然素材と比べると傷や汚れに強く、一定期間は美しさを保てるといわれています。新建材は1960年代後半におけるマンションの建築ラッシュの頃から使われるようになりました。

 

私たちの会社でも、かつては新建材を使っていました。しかし、20年前の出来事をきっかけに、新建材で内装することに疑問を抱き、自然素材に着目するようになったのです。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか』から抜粋したものです。その後の法制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか

なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか

鈴木 雄二

幻冬舎メディアコンサルティング

注文住宅や、中古住宅のフルリフォームでは、当たり前に使われる、無垢フローリングや、珪藻土塗りの壁などの自然素材。 しかし、新築マンションだけが調湿効果の少ない合板フローリングやビニールクロスなどの新建材で作ら…

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