(※写真はイメージです/PIXTA)

退職金は、多くの人にとって老後生活を支える大切な資金です。まとまった金額が口座に入ると、「少しでも増やしたい」と考える一方で、投資経験が少ない人ほど、金融機関の提案を頼りにすることがあります。しかし、商品内容や手数料、リスクを十分理解しないまま契約すると、数年後に思わぬ差を感じることもあります。

「増えていると思っていたのに」…手数料と商品選びで見えた差

帰宅後、小林さんは改めて運用報告書を確認しました。

 

評価額は大きく減ってはいませんでした。しかし、購入時手数料や信託報酬、保険に関する諸費用を含めて見ると、思っていたほど増えていないことが分かりました。

 

「損しているわけではない。でも、増えてもいない」

 

小林さんは、そう感じました。

 

同期の一人は、同じ時期に少額ずつ積み立てを始め、低コストの商品を長期で保有していました。相場環境にも支えられ、資産は着実に増えていたといいます。

 

もちろん、投資結果は時期や商品、リスクの取り方によって変わります。誰かの運用が正解で、自分の運用が間違いだったと単純に言えるものではありません。

 

それでも小林さんには、強い後悔が残りました。

 

「自分は“銀行に預けた”感覚だったんです。でも実際は、リスクも手数料もある金融商品を買っていたんですよね」

 

金融庁も、金融商品の購入にあたっては、リスクや手数料、運用方針を確認することの重要性を示しています。特に退職金のようなまとまった資金は、一度に大きく動かすのではなく、生活費や緊急資金と分けて考える必要があります。

 

小林さんは、ファイナンシャルプランナーに相談し、保有商品の内容を整理しました。すぐにすべてを解約するのではなく、手数料やリスクを確認しながら、一部は低コストの商品へ移し、年金生活に必要な現金も確保することにしました。

 

「銀行が悪いと言いたいわけではありません。説明を聞いたつもりで、分かった気になっていた自分にも問題がありました」

 

老後資金をどう守り、どう増やすのか。その判断を他人任せにしてよいのかという現実に直面した小林さん。

 

退職金2,300万円は、小林さんにとって安心の土台になるはずのお金でした。しかしそのお金をどう扱うかを自分で理解していなければ、安心は簡単に揺らぎます。

 

「もっと早く、自分で調べればよかった」

 

小林さんは今、運用報告書を読む習慣をつけています。

 

退職金の運用で大切なのは、“誰に任せるか”だけではありません。自分が何を買い、どんなリスクを取り、どれだけの費用を払っているのか。その基本を知らないまま始めたことが、小林さんにとって一番大きな誤算だったのです。

 

 

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