本連載は、英系投資顧問会社SPRING社の取締役で、グローバルマクロ戦略主任である塚口直史氏の著書、『情報を「お金」に換えるシミュレーション思考』(総合法令出版)の中から一部を抜粋し、高齢化・自然災害によって起こり得るリスクストーリーを考え、対策をシミュレーションしていきます。

2015年以降、人口が減り続ける日本

「少子高齢化」という言葉を聞いて久しくなります。この言葉に鈍感になってきているのは私だけではないはずです。そのため、少子高齢化を数値に置き換えてその意味を突きつけられたとき、衝撃を受けてしまいます。

 

まず、子どもが少ない云々以前に、老人がどんどん亡くなっていく世の中が少子高齢化社会です。号外が出たので、記憶に残っている方もいるのではないでしょうか。

 

2015年は1920年に国勢調査が始まって以来、史上はじめて日本の人口が減る年となりました。あまりにも多くの方が亡くなっていくため、今、都内の火葬場はどこも1週間待ちと聞きます。そして、以降毎年人口は減っていきます。

 

2016年の総人口1億2711万人は、14年後の2030年に1億1662万人へと1000万人以上が減少し、2050年には9708万人へとさらに2000万人が減る予定です(人口問題研究所)。

 

しかし、ただ人口が減るだけなら、需給均衡の観点から考えた場合、ある程度の産業活動や雇用機会が減っても構わないとも言えます。最も影響があるドライバーになると考えられるのは、生産人口のより大きな減少です。

最も懸念される問題は「社会保障費の負担増」

今後50年をかけて、2060年までに日本の生産年齢人口が3755万人も減少することの影響は甚大です。そんなに遠い未来の話ではありません。早くも9年後には「2025年問題」がやってきます。

 

「2025年問題」とは、団塊の世代が2025年頃までに後期高齢者(75歳以上)に達することにより、介護・医療費等社会保障費の急増が懸念される問題です。

 

10年後の2025年、高齢者人口は、約3500万人(人口比約30%)に達すると推計されています(厚生労働省)。 高齢者(65歳以上)1人に対して生産年齢人口(15~64歳)が何人で負担するか? という人数も大きく変化してきました。

 

「胴上げ型/1965年」高齢者1人に対し生産年齢人口9.1人。

「騎馬戦型/2012年」高齢者1人に対し生産年齢人口2.4人。

「肩車型/2050年」高齢者1人に対し生産年齢人口1.0人。

 

低い出生率と諸外国に例を見ないスピードで高齢化が進行し、年金など厳しい社会保障費負担の社会到来が予想されています。人口に占める働く人の割合が低下する状態は「人口オーナス」(オーナスは重荷の意味)と呼ばれています。

 

この人口オーナス状態になった経済社会ではどのような影響が現れるのでしょうか? 次回は具体的なリスクストーリーを見ていきましょう。

情報を「お金」に換える シミュレーション思考

情報を「お金」に換える シミュレーション思考

塚口 直史

総合法令出版

思い描く人生を歩むためには仕事でもプライベートでも、自分なりの「ストーリー」を描き、「シミュレーションすること」が必要です。このシミュレーションをせず周りの意見に流されて行動したり、思いつくがままに行動すると、…

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