今回は、資産の一部を「海外」で保有しておくべき理由を説明します。※本連載は、英系投資顧問会社SPRING社の取締役で、グローバルマクロ戦略主任である塚口直史氏の著書、『情報を「お金」に換えるシミュレーション思考』(総合法令出版)の中から一部を抜粋し、自然災害・高齢化によって起こり得るリスクストーリーを考え、対策をシミュレーションしていきます。

関東大震災のあとに発生した「金融恐慌」

日本にとって、この地震の後に、本当の地獄がやってきます。命の次に大切なお金が、金融恐慌発生に伴う銀行破綻とともになくなってしまったのです。

 

当時、日本中で保険が販売されていました。特に日清戦争以降、徴兵保険を基盤として火災保険まで、13種類の保険が30社あまりの保険会社から販売されていました。地震発生時の1923年では、日本人は6億9963万4000円相当の生命保険を購入していたので、関東大震災の被害は、ほぼ民間の保険会社がカバーするものとなっていたのです。

 

ところが、地震による損失額の合計は保険掛金の10倍にあたる60億円と莫大なもので、到底その損害を埋め合わせることなどできません。

 

結局、日銀特融などの超法規的な金融貸し出し対応が、被災した金融機関や企業に行われていきますが、無理がたたって、昭和金融恐慌が発生します。ありもしない売掛債権を、「焼けてしまった」と虚偽報告し、不正に日銀特融を借り受けていた多くの企業への貸出が不良債権化します。結果、多くの銀行が連鎖倒産していきました。預金も保護されず、多くの人が路頭に迷うことになりました。関東大震災から4年後の1927年のことです。

資産全てを国内で保有するのはリスクが高い

南海トラフ大地震が起きた場合、日本の金融機関に預金を行い、日本円を使用して生活をしている以上、日本中の人々にその悪影響が出ることを覚悟する必要があります。

 

今のうちから、あなたの資産のうちの何割かを海外資産で保有しておくことをお勧めします。これは資産運用という観点からではありません。将来の生活のための保険という観点からのアドバイスです。それでも多くの人が大部分は国内資産として保有しているはずです。

 

ここで一点注意があります。地震が起きた後は、必ず大規模な金融緩和と国を挙げての国土再建が行われるはずです。不動産価格は持ち直しを見せる確率が非常に高いので、慌てて安値でお手持ちの不動産を売却することのないようにしましょう。

情報を「お金」に換える シミュレーション思考

情報を「お金」に換える シミュレーション思考

塚口 直史

総合法令出版

思い描く人生を歩むためには仕事でもプライベートでも、自分なりの「ストーリー」を描き、「シミュレーションすること」が必要です。このシミュレーションをせず周りの意見に流されて行動したり、思いつくがままに行動すると、…

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