市場が「節目」と考える株価を意識する
安倍政権と日銀の政策、さらに国際情勢という不安定要因はありますが、トランプ大統領の誕生で2016年に新たな上昇波動が動き出したことは間違いないだろうと見ています。
とはいえ、まだ方向性がきちんと定まっているとまでは言えません。本書(『世界マネーが狙う「大化け日本株」』小学館)のはじめで2017年は大波乱相場になると述べたように、この相場は大波からさざ波まで、さまざまな波動が折り重なっていますから、投資家は細心の注意を払う必要があります。すでに紹介したように、波動に関する格言には「大回り3年、小回り3か月」という言葉もあり、そうした日柄を判断材料にすることも有効でしょう。また、三角保ち合いやW底など、チャート分析で相場の転換点を予測する手法も取り入れるべきです。
大きな波動のなかで小さな値動きを予測する時には、日柄とともに節目となる株価を意識しておくことも大切です。本書の第1章で長期チャートを解説した際に、リーマン・ショック後の最安値が、バブル相場前の最安値に接近(類似)したことを紹介しました。プロの投資家が過去の天井や底値を「節目の株価」と強く意識して相場の転換点になる現象です。それ以外にも市場が節目と考える株価はいろいろあり、そこが転換点になる可能性を知っておくことで、効率よく相場の波に乗ることができます。
「楽観シナリオ」「中立シナリオ」「悲観シナリオ」
私は相場予測で3つのシナリオを比較検討する方法をとります。想定する天井の高い順に「楽観シナリオ」「中立シナリオ」「悲観シナリオ」と呼ぶことにしましょう。この時、天井となる株価を考えるポイントが「節目の株価」になります。
2016年に始まった新しい波動で、どのような目標株価が描けるのか、シナリオごとに順を追って説明しましょう。
まずは楽観シナリオです。改めてリーマン・ショック後のチャートを見ると、波動の教科書のようなシンプルな波形を示していることがわかります。2009年から2012年は底ばいの3年、そこから3年波動が動き始めて2015年に天井、その後は調整に入り、2016年の年央から秋にかけて、ようやく相場転換のサインが見られました。
経験則に沿ったきれいな日柄のチャートであるだけでなく、値ごろ(株価)も相場の定石通りです。リーマン・ショック後の最安値がバブル前の最安値と面合わせだというのは再三指摘した通りです。最初の3年波動の天井は2015年6月の2万952円ですが、これは2000年4月に記録した2万833円という高値との面合わせです。この15年前の高値は21世紀に入って一度も抜くことができなかった大きな節目であり、ここを突破できるかどうかは私を含めて市場関係者の関心事でした。
1年前、私は7年波動説を考えるにあたり、この2000年の高値を突破するか、あるいは高値面合わせとなってダブルトップを形成し、当面の天井となるかに注目していましたが、結果的には2012年からの3年波動が強く、当面の天井のほうになりました。このチャートではっきり言えるのは、節目となる株価の力です。
楽観シナリオの展開については、次回連載に続きます。