賃金の上昇と雇用の拡大が着実に進むことが条件
2016年には、大隅良典・東工大栄誉教授がノーベル医学・生理学賞を受賞し、これで3年連続の日本人によるノーベル賞受賞となりました。そのような最先端研究や先進技術によって、サービス、生活の質が向上していくことが第2ステージの目標です。具体的な政策と投資する銘柄などの検証は本書の第3章に譲りますが、ここでは「量から質へ」がキーワードになることを指摘しておきます。
もう少しイメージしやすい言葉で言うなら、楽観シナリオの条件は日本全体で賃金上昇と雇用拡大が着実に進むことです。安倍政権はさまざまなアプローチで賃金上昇を画策していますが、今のところ一進一退で明確な方向は見えてきません。これがしっかりと上昇し始めれば、国民の心理も改善し、消費や投資が主導する確かな相場につながります。もちろん、雇用も大事です。今は人手不足で失業者はかなり減っていますが、少子高齢化によって企業の側は慢性的な人手不足です。雇用の拡大とは、必ずしも失業率の減少という意味ではなく、日本全体で労働者の数が増えることです。それは企業活動が活発化した結果でもあり、生産、消費の両面から経済拡大が確認される状態を意味します。
経済へのインパクトが絶大な外国人労働者の受け入れ
安倍政権は、国内の企業活動を刺激し、雇用を拡大するために外国人労働者の受け入れを決断するかもしれません。あまり一般には知られていませんが、実は今も製造業や農業の現場には外国人労働者がたくさんいます。ただし、そうした単純労働では〝労働者〟は受け入れられないので、彼ら彼女らは〝技能実習生〟という名目で滞在ビザを取得しています。これは国内で賄えない労働力を補うための方便ですが、実習生という扱いだと、数年働いて仕事や言葉をようやく覚えた頃には滞在期間が切れて帰国しなければなりません。そうした人たちが長く滞在できるような政策を安倍首相は考えているようです。また、女性の社会進出を助ける家事労働者(いわゆるメイド)やベビーシッターなどに外国人を活用する可能性もあるでしょう。
ヨーロッパやアメリカで移民が引き起こす諸問題が注目されているなかで、これに反対する声も当然あるでしょうが、きちんとしたルールを作れば不可能なことではありません。この政策は新たな予算措置などがほとんど必要なく、政治決断だけで可能です。そして、経済へのインパクトは絶大です。人手不足の企業や共働き家庭が助かるだけでなく、人材斡旋や人材派遣など関連する新しい業界が発展するでしょう。
それができれば日本経済の構造が根本から変わります。安倍政権は本書(『世界マナーが狙う「大化け日本株」』小学館)の第3章で紹介するように、GDP600兆円を実現するプランを練っていますが、政治決断ができるなら、2030年頃を目途にGDP1000兆円も不可能ではないと思います。また、それくらいの大きな目標を掲げて努力しなければ、第2ステージすらうまくいかないでしょう。
もっとはっきり言うなら、国論を二分するような政治決断をするためには、安倍首相にさらなるリーダーシップが求められます。安倍政権の支持率、自民党総裁任期の延長による安倍総裁の3選など、安倍政権の政治力や存続に関わる情報にも注意しておく必要があります。
改めて株価の話に戻ると、アベノミクスが前進して賃金上昇、雇用拡大が進むようならば、2019年までに株価は2万7000円を目指して上昇します。もしトランプ相場で日米の株価が急騰するようなことがあれば、2017年の末にも2万7000円に接近するシナリオも夢ではなくなるかもしれません。その勢いを測る指標として、為替のドル円相場も参考になります。トランプ経済が順調に発展した場合、1ドル=110~115円のゾーンに落ちつく。あるいはもっと円安が進んで120円台、130円台もあり得ると見ています。為替動向も確かめながら楽観シナリオの成否を見極めてください。