市場心理が強気になりきれない「中立シナリオ」
●中立シナリオは「半値戻しの壁」
現段階では楽観シナリオはとてもきれいなストーリーに見えますが、長い波動のチャートを見ると、注意すべき「壁」も見えてきます。
もう一度、前回の長期チャートを見てください。日本の株式市場は、バブル相場が終わった1989年から20年かけて底値をつけ、今の上昇トレンドに入ったわけですが、この下落トレンドで株価はおよそ3万9000円から7000円まで3万2000円も値下がりしました。
ここで「半値戻し」を思い出してください。3万2000円の半値は1万6000円、したがってバブル崩壊後の底値7000円からの「半値戻し」は2万3000円です。長期トレンドで言うなら、この2万3000円を超えてきた時こそが超強気相場の到来です。半値戻しは全値戻し、の格言が通用するなら日経平均4万円も見えてくることになります。
しかし、バブル崩壊以降、日本株は何度も半値戻しにトライし、ことごとく跳ね返されてきました。バブル崩壊後の一番高い天井は1996年6月の2万2750円でした。アベノミクス相場は久々の大相場になりましたが、それでも2万1000円を目前に息切れしたのです。今度こそアベノミクスの前進でこれを突破していくという見通しが楽観シナリオですが、波動は力強くても、市場心理が強気になりきれないケースが中立シナリオで、この場合の目標株価は2万3000円ということになります。
量的緩和から撤退し、マイナス金利政策を拡大すれば・・・
現状を分析するなら、アベノミクスが片肺飛行になることが懸念されます。最初の3年相場では、日銀の量的緩和と政府の財政出動、経済政策が両輪となって相場を牽引しました。しかし、日銀が量的緩和から撤退し、マイナス金利政策を推し進めることになれば、アベノミクスは片肺飛行に陥ります。
マイナス金利政策は金融機関の業績を悪化させ、融資の縮小、国債の売却などを招いてデフレ懸念を再燃させます。そうなれば企業も個人も投資や消費を控えて資金需要が細ってしまいます。すでに悪い兆候は出始めていますから、日銀がこのタイミングで無理にマイナス金利の深掘りに走る可能性は低いと思いますが、そうだとしてもアベノミクスは片肺を強いられますから、2万3000円が将来の株価の壁になる可能性があります。