次の株価の壁は、2015年の高値である2万900円近辺
●悲観シナリオの可能性は極めて低い
悲観シナリオのカギを握るのも日銀です。もし、マイナス金利政策に固執し、そこからの撤退できない状態になってしまった場合、アベノミクスそのものが限界に達する可能性もあります。そうなれば内閣の支持率も下がり始め、安倍政権そのものが危機に陥ります。それが明らかになった時点で、株価の下落トレンドが始まります。
ただ、本稿締め切り時点で判断するなら、トランプ登場のインパクトは非常に大きいので、日銀が金融政策でよほど馬鹿なことをしない限り、悲観シナリオの可能性は極めて低いと予想します。
一応、波動とチャートから判断するなら、三度2万900円が天井になるケースと、そこにも届かず、すなわち新値を取らずに反落してしまうケースが考えられます。波動の強さ、相場の法則から言って、半値押しせずに切り返したからには2万900円まで戻す、あるいは新高値を更新する可能性は高いと思いますが、まずは次の株価の壁が、2015年の高値である2万900円近辺であることは間違いありません。そこをいつ突破するかによって、今後の日本株の強さがわかります。
インフレが「良い循環」を生んだ1970年~1990年
●楽観シナリオを後押しする「逆オイルショック」
私は現段階では楽観シナリオの可能性が高いと判断しています。
外国人投資家の存在感が強い現代の日本市場は、為替と株価が連動する傾向が強く、逆に日本企業や国内投資家もグローバル市場を意識し、国内の景気や経済政策に対応してさまざまな自己防衛策を講じるようになっていることが背景にあります。
1982年から1989年までのバブル相場は、きれいな7年波動だとお話ししました。しかし、もっと超長期の波動を見ると、日本の株価は1970年頃から1990年まで20年波動で上がり続けたことも大切なポイントです。1971年のニクソン・ショックで暴落した株価は、その後急速に上昇を始め、札幌冬季オリンピックなどをはさんで1973年まで上がり続けます。その年に第一次オイルショックで調整期間に入りますが、暴落というほどの落ち込みはなく、3年の停滞を経て1976年からは再び長い上げ相場が始まります。そして1982年にようやく調整が入って、その直後からバブル相場が始まったのです。
そう考えると、この20年相場の上昇を支えたのは、実は国民を苦しめたと思われているオイルショックによるインフレでした。資産バブルで土地も物価も上がり、それにつれて株価も急上昇、企業業績も拡大したので賃金が上昇し、人々の生活の質は向上しました。インフレが良い循環を生んだ好例だったのです。
それに対し、今の相場は「逆オイルショック」とも言うべきものです。ここ数年、原油価格は急落し、輸入物価はどんどん下がりました。国内ではデフレが進む要因にもなりましたが、貿易収支が赤字と黒字を行ったり来たりしている今の日本経済にとっては、輸入物価の下落は決して悪いことばかりではありません。東日本大震災後のエネルギー輸入の急増を比較的楽に乗り切れたのも原油安のおかげです。
マイナス金利政策はしばらく続くことが予測される
では、これから何が起きるでしょうか。
日銀は政策転換したばかりですから、現実的に考えて、すぐにマイナス金利の間違いを認めて撤回することはないでしょう。マイナス金利時代はしばらく続くと思われます。そういう時代には企業も個人も利回りを重視する資産運用に走ります。グローバル市場に手が届きやすい現代なら、近いうちに利回りの高い外債投資が拡大すると予測できます。
それが何を引き起こすかといえば円安です。楽観シナリオで触れたように、ドル円相場が110円を越えてくると、割安になった日本株への外国からの投資が加速し、株価に勢いがつく可能性が高いでしょう。
マイナス金利は間違った政策ですが、国民や企業が自己防衛戦略を持つようになったことは間違いありません。その反動として円安=株高が進む可能性があるのです。その意味でも、日銀が多少足を引っ張っても、波動が示す楽観シナリオの可能性は高いでしょう。
なお、円安と株高の関係については、本書(『世界マナーが狙う「大化け日本株」』小学館)第4章の国際情勢解説でも詳しく述べようと思います。