「割り勘で」と言った途端に…
Dさんの異常な支出に気づいたのは、妻でした。ある日、Dさんがリビングに置きっぱなしにした通帳を見て、妻は絶句します。継続雇用になってからのわずか1年で、貯蓄が300万円近くも目減りしていたのです。
「え…? お給料が減ったとは言っていたけれど、それでもこんなに減ることある?」
夫は現役時代から「俺が稼いだ金は俺が管理する」と、積極的に妻に共有することはありませんでした。妻は夫を信頼し、任せていれば大丈夫と考えていたのです。
「あなた、いったい何にお金を使っているの? 65歳まで年金も出ないのに……」
「俺には俺の事情があるんだよ。家にいるだけのお前に何がわかる?」
そんな言葉から激しい口論にもつれ込み、とうとう妻は実家へ帰ってしまったのです。
さすがのDさんも反省。冷静になれば、妻が驚くのも当然の出費です。「これからは割り勘で」と周囲に伝えた途端、誘いの声は静かに途切れました。
「もう、誰にも誘われないんですよ。求められていたのは私の“財布”だけだった。馬鹿でしたね。失った肩書をお金で埋めようとしていたなんて」
財布を開かなければ維持できない人間関係に、意味はありませんでした。Dさんは、ようやく“元部長”の幻影を追うのをやめて、今の自分と向き合う日々を送っています。

