定年後も同じ会社で働き続けるDさん。しかし、肩書も年収も失い、かつての部下に指示を受ける立場へと変わっていました。しかし、「部長だった自分」を手放せずにいた結果、失ってしまったものとは?

「お会計、ここは俺が」元部長が縋った優越感

「今の自分は、かつての部下の指示を仰ぐ身。せめて、酒の席くらいは部長に戻りたかったんです」

 

そう肩を落とすのは、建設会社で営業部長を務めていたDさん(61歳)。1年前に定年を迎え、現在は継続雇用の「シニア嘱託」として同じ職場で働いています。

 

かつての部下が今や上司。Dさんの仕事は、自分が采配を振っていた現場の「安全管理」というサポート業務に変わりました。

 

ピーク時に1,000万円あった年収は450万円へ激減。しかし、再雇用の身になっても、Dさんは仕事帰りの飲み会に誘われれば、無理をしてでも参加しました。

 

後輩たちが、今ではDさんに気を使いながら仕事の指示を出してくる。その気まずさや惨めさを払拭できる瞬間が、会計の時だったのです。

 

「いいよ、退職金が入ったしさ」

 

そう言って財布を開きます。しかも、出費はそれだけにとどまりませんでした。


「Dさんが来るなら、ゴルフコンペの景品も期待できるな」


そんな周囲の空気を勝手に読み取り、頼まれてもいないのに豪華な景品を差し入れ、プレー後の打ち上げでも「ここは俺が」と財布を開く。1回のゴルフで5万円、10万円と消えていくのはザラでした。

 

退職金を1,800万円受け取ったのは事実です。しかし、実際には住宅ローンの残債に多くを充てていました。生活費、子どもへの援助、車の維持費など固定費も重く、再雇用後の給与だけでは毎月赤字が続いていました。

 

次ページ「割り勘で」と言った途端に…

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