(※写真はイメージです/PIXTA)

「成績不良の社員を解雇したいが、法的なハードルが高すぎる」。多くの経営者や人事担当者が直面するこの悩み。安易な解雇は、労働審判や訴訟に発展するだけでなく、企業の社会的信用を大きく毀損するリスクを孕んでいます。特に上場を控えた企業にとっては、1人の解雇問題が経営の根幹を揺るがしかねません。そこで、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」へ寄せられた質問をもとに、解雇の妥当性と前職確認の法的リスクについて、林 遥平弁護士が解説します。

採用前の調査と経歴確認の注意点

前職でのトラブルを理由に解雇できるかを検討する際には、「そもそも会社は採用時にどこまで応募者の過去を確認できるのか」という問題も重要です。

 

企業には、採用の自由があり、応募者が自社で働くのにふさわしい人物かを判断するため、一定の範囲で情報収集を行うことが認められます。たとえば、学歴、職務経歴、保有資格、過去の業務経験などは、業務遂行能力を判断するうえで重要な事項です。また、職場への適応性、協調性、企業秩序を守る姿勢、企業の信用保持に関わる事項についても、必要かつ合理的な範囲で確認することは許されます。

 

そして、応募者は、これらの事項について会社から具体的に質問された場合には、真実を回答する義務を負います。たとえば、保有していない資格を「持っている」と述べたり、経験していない業務を「経験済み」と説明したりすれば、経歴詐称として問題となり得ます。特に、その資格や経験が採用判断や担当業務に直結する場合には、後に解雇の有効性を基礎づける事情となることもあります。

質問していないことを「経歴詐称」として評価するのは…

他方で、応募者には、会社から問われていない事項についてまで、自ら先回りして不利益な情報を申告する一般的な義務まではありません。前職で解雇されたことや、残業代請求をめぐる紛争があったことについても、採用時に具体的に質問されていないのであれば、申告しなかったことだけをもって直ちに経歴詐称と評価するのは難しいでしょう。

 

また、会社側が前職関係者に無断で照会する場合にも注意が必要です。応募者本人の同意なく、前職での勤務状況やトラブル歴を聞き出すことは、個人情報保護やプライバシーの観点から問題となる可能性があります。リファレンスチェックを行う場合には、本人の同意を得たうえで、確認事項を業務上必要な範囲に限定することが重要です。

 

結局のところ、経歴詐称を理由とする解雇をめぐる紛争では、「会社が採用時に何を質問していたか」「応募者がそれにどう答えたか」「その内容が業務にどの程度関係していたか」が重要になります。

 

そのため、企業としては、採用後に過去のトラブルを理由に解雇を検討するよりも、採用段階で確認すべき事項を明確にしておくことが実務上有効です。具体的には、応募書類や面接で確認する項目を整理し、業務上重要な資格・職歴・懲戒歴等については、必要に応じて書面で申告を求めることが考えられます。

 

ただし、確認できる範囲は無制限ではありません。業務との関連性が乏しい私生活上の事項や、差別につながり得る事項まで広く調査することは避けるべきです。採用時の情報収集は、「業務に必要か」「採用判断に合理的に関係するか」という観点から、必要最小限にとどめることが求められます。

 

前職でのトラブルが発覚した場合でも、それだけで直ちに解雇できるわけではありません。大切なのは、その事実が現在の業務遂行や職場秩序に具体的な影響を及ぼしているかを冷静に見極めることです。経歴確認は、解雇のための材料探しではなく、適切な採用判断とミスマッチ防止のために行うべきものといえます。

 

 

林 遥平

弁護士法人かける法律事務所

弁護士

 

 

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