ハンガリーで16年ぶり政権交代──「対ロシア政策」転換の行方と〈低税率国家〉への影響【国際税務の専門家が解説】

ハンガリーで16年ぶり政権交代──「対ロシア政策」転換の行方と〈低税率国家〉への影響【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

2026年4月の総選挙の結果、およそ16年ぶりの政権交代を迎えたハンガリー。ロシア寄りの姿勢を堅持してきた前政権の退場により、EUの結束やウクライナ支援への影響に注目が集まります。また、ハンガリーは法人税9%という低税率で知られる「投資誘致国家」。新政権誕生による政治の転換は、この税制にどのような影響を与えるのでしょうか。

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16年ぶりの政権交代とEUへの影響

2026年4月12日に実施された総選挙の結果、ヴィクトル・オルバン首相率いる与党は、新興政党「ティサ」に敗れ、約16年ぶりの政権交代が実現しました。

 

これまでハンガリーは、ロシアに比較的融和的な姿勢を取り、EUによるウクライナ支援に対しても慎重な立場を取ってきました。そのため今回の政権交代は、EUの対ロシア政策における「足並みの乱れ」が解消される可能性があるとして、大きく報じられています。

 

新政権の誕生により、EUはより一体的な意思決定のもとでウクライナ支援を進めやすくなると見られています。

地政学的背景とこれまでの政策

ハンガリーは中央ヨーロッパに位置する内陸国で、オーストリア、スロバキア、ウクライナ、ルーマニアなどと国境を接しています。国土は日本の約4分の1、人口は約950万人(2025年時点)です。

 

同国は1989年に社会主義体制から転換し、1999年にNATO、2004年にはEUへ加盟しました。

 

一方で、2015年の欧州難民危機では、国境にフェンスを建設して流入を防ぐなど、独自路線を取ってきた経緯があります。この政策は国際的な批判を招いたものの、国内では一定の支持を得ていました。

低税率で企業を呼び込む税制

ハンガリーの特徴のひとつが、国際的にも際立つ低税率です。

 

1990年には40%だった法人税率は、現在では9%まで引き下げられています。また、個人所得税は15%のフラット税率が採用されています。

 

一方で、付加価値税(VAT)は27%とEU内でも最高水準にあり、消費課税の比重が高い構造です。さらに、デジタルサービス税として7.5%が課されるなど、特定分野には別途課税が行われています。

「低税率=タックスヘイブン」ではない理由

法人税率9%という水準だけを見ると、ハンガリーはタックスヘイブンとみなされる可能性もあります。しかし、実際にはそうした扱いは受けていません。

 

その理由としては、業種ごとに追加課税が行われる点や、税制・法制度が国際的な透明性基準を満たしている点が挙げられます。一般にタックスヘイブンとされる国・地域は、低税率に加えて規制の緩さや情報開示の不十分さが問題となりますが、ハンガリーはこれに該当しないと評価されています。

政権交代は税制に影響するのか

今回の政権交代により、対外政策やEUとの関係には変化が生じる可能性がありますが、税制については大きな転換がすぐに起こるとは考えにくい状況です。

 

ハンガリーは、経済規模や所得水準で西欧諸国との格差が残っており、企業誘致を目的とした低税率政策は依然として重要な成長戦略だからです。人口流出への対応という側面もあり、急激な増税は現実的ではありません。

EUが抱える構造的課題

EUにとって、今回の政権交代は対ロシア政策の統一という点では前進といえます。しかし、東西加盟国間の経済格差という構造的な問題は依然として残っています。

 

仮にウクライナ問題が収束したとしても、この格差の是正には長い時間が必要です。ハンガリーのような低税率政策は、その格差を背景にした必然的な選択でもあり、EU全体の税制調和を難しくする要因でもあります。

 

 

矢内一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

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