(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢になると、各種手続き、支払いの確認などを子どもに任せる場面が増えていきます。家族に頼れることは大きな安心につながりますが、管理の範囲や本人の意思が曖昧なまま進むと、かえって生活の自由が狭まることもあります。高齢期の財産管理は、誰かに任せるかどうかだけでなく、どこまで任せるのかを明確にしておくことが重要です。

「全部任せて」息子の言葉に安堵した父だが…

一人暮らしをする隆三さん(仮名・82歳)は、長年、不動産賃貸業を営んできました。妻を亡くしたあとは、自宅のほかに小さな賃貸物件をいくつか所有し、年金と賃料収入で不自由のない生活を送っていました。

 

預貯金もあり、周囲から見れば「老後の心配は少ない人」でした。ただ、隆三さん自身は年齢を重ねるにつれ、銀行手続きや書類の確認に負担を感じるようになっていたといいます。

 

「昔は自分で何でもやっていました。でも、最近は文字も見づらいし、ネットの手続きもよく分からなくて」

 

そんな父を心配したのが、一人息子の正樹さん(仮名・52歳)でした。正樹さんは会社員として働きながら、週末には父の家を訪ねていました。

 

「もう心配いらないよ。口座のことも支払いのことも、全部任せて」

 

そう言われたとき、隆三さんは正直ほっとしたといいます。

 

「息子ですからね。ほかの人に頼むより安心だと思いました」

 

最初は、公共料金の支払いや固定資産税の確認、通院費の振り込みなど、実務的な手伝いにすぎませんでした。隆三さんも「助かる」と感じていました。

 

ところが、少しずつ違和感が出始めます。

 

「この支払いは何だったかな」と聞いても、正樹さんは「こっちで見ておくから大丈夫」と答えるだけ。通帳や印鑑は息子が預かるようになり、キャッシュカードも「なくすと危ないから」と持っていきました。

 

「最初は、私のためにやってくれていると思っていました」

 

金融庁の資料『高齢者など認知・判断能力の低下した顧客への対応』では、認知判断能力の低下や喪失への備えが十分ではないこと、また判断能力が低下した人の金融サービス利用に課題があることが示されています。高齢期の財産管理では、本人の意思を確認しながら、透明性を保つことが欠かせません。

 

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