(※写真はイメージです/PIXTA)

一人暮らしは自由な反面、生活の管理もすべて自分に委ねられます。仕事や環境の変化によって、食事や掃除といった日常が後回しになることも珍しくありません。表面上は問題なく見えても、内側では生活のバランスが崩れているケースもあります。離れて暮らす家族にとって、その変化は気づきにくいものです。

「連絡が減った気がする」母が感じた違和感

智子さん(仮名・50歳)は、都内で一人暮らしをしている長男・翔太さん(仮名・23歳)の様子が気になっていました。

 

翔太さんは大学卒業後、都内の企業に就職。手取りは月22万円ほどで、ワンルームマンションに住んでいます。

 

「最初は、仕事も忙しいだろうし、連絡が少なくても仕方ないと思っていました」

 

しかし、ある頃から返信が遅くなり、電話にも出ないことが増えていきました。SNSの更新も止まり、「元気にやっているのか分からない」状態が続いたといいます。

 

「“大丈夫”とは言っていたんですが、どこか様子が違う気がして」

 

ある日、智子さんは思い切って息子の部屋を訪ねることにしました。事前に連絡はしたものの、返事はありませんでした。

 

「迷いましたが、このまま何も知らないのも不安で……」

 

休日の昼過ぎ、最寄り駅から歩いて10分ほどのマンションに到着。インターホンを押すと、しばらくしてからドアが開きました。

 

「顔を見た瞬間、あれ?と思いました。疲れているというか、少しやつれているように見えて」

 

翔太さんは「なんで来たの?」と戸惑った様子でしたが、智子さんは「少しだけ」と言って部屋に上がりました。そこで目に入った光景に言葉を失ったといいます。

 

部屋の中は、想像していたものとは大きく違っていました。

 

床にはコンビニの袋や空のペットボトルが散乱し、テーブルの上には食べかけの弁当容器がそのまま置かれていました。キッチンはほとんど使われた形跡がなく、シンクには未洗いの食器が積み重なっていました。

 

「正直、ここで生活しているとは思えない状態でした」

 

冷蔵庫を開けると、中には飲み物と簡単な食べ物が少しあるだけ。まともに自炊をしている様子はありませんでした。

 

「ちゃんと食べてるの?」と聞くと、翔太さんは「大丈夫」とだけ答えたそうです。

 

ただ、その声には力がありませんでした。

 

話を聞くと、仕事は忙しく、帰宅は夜遅くなることが多いといいます。朝はギリギリに起きて出勤し、帰宅後はコンビニで買ったものを食べて、そのまま寝てしまう生活が続いていました。

 

「休みの日も、掃除をする気力がなくて……気づいたらこうなっていました」

 

家賃は約8万円。光熱費や通信費、食費を含めると、毎月の支出はほぼ収入と同じくらいになっていました。

 

「貯金はほとんどできていませんでした。カードで補っている部分もあったようです」

 

厚生労働省『令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況』によると、新規学卒者の初任給は大学卒で月26万2,300円です。都内での一人暮らしでは、生活費の余裕は限られます。

 

「お金も時間も余裕がない中で、生活そのものが後回しになっていたんだと思います」

 

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