「来てくれてよかった」少しずつ整い始めた生活
その日、智子さんは数時間かけて部屋を一緒に片づけました。ゴミをまとめ、最低限の掃除をし、食材もいくつか買い足しました。
「本当はそこまでやるつもりはなかったんです。でも、このまま帰ることができませんでした」
帰り際、翔太さんは小さな声でこう言ったそうです。
「来てくれてよかった」
その言葉を聞いたとき、智子さんは複雑な気持ちになったといいます。
「本人は大丈夫だと思っていたんでしょう。でも、実際にはギリギリの状態だったのかもしれません」
一人暮らしは、自分のペースで生活できる反面、誰にも気づかれないまま生活のバランスが崩れていくこともあります。
その後、翔太さんは少しずつ生活を立て直しています。すぐに大きく変わったわけではありませんが、週末にまとめて掃除をする、食事を少し見直すなど、小さな改善を続けているといいます。
「一人でやるのが当たり前だと思っていました。でも、完全に一人で抱え込まなくてもいいのかもしれません」
大きく何かが劇的に変わったわけではありません。それでも、これまで見えにくかった生活の偏りが、表に出たことは確かでした。
「元気にやっていると思っていても、実際はそうではないこともある」
抜き打ち訪問が直接的な解決になったわけではありません。ただ、生活の実態が可視化されたことで、初めて見直す余地が生まれたようです。
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