「子どもには頼れない」…母の本音を聞いた長女が考えたこと
点滴を受けて少し落ち着いたあと、病室で芳恵さんが「どうしてこんなになるまで黙っていたの」と尋ねると、雅子さんはしばらく黙り込んだ末、小さな声でこう言いました。
「子どもには頼れないから」
芳恵さんは、その言葉に絶句したといいます。
話を聞くと、雅子さんは電気代や食費の値上がりを強く気にしていました。通院代や薬代もあるなかで、まず削ったのが食費だったそうです。朝は食パン1枚、昼は抜き、夜だけ簡単に食べる。そんな日も珍しくなかったといいます。
「芳恵にも家庭があるし、お金も時間も余裕があるわけじゃないでしょう」
母はそう言いました。芳恵さんは夫と大学生の子どもを抱え、自分たちの家計にも余裕があるわけではありません。それでも、母はその事情を自分の中で大きく受け止め過ぎていたようでした。
高齢の一人暮らしが増える中、こうした“遠慮による孤立”は特別な話ではありません。内閣府『令和7年版高齢社会白書』では、65歳以上の一人暮らしは今後も増える見込みとされています。
その後、芳恵さんは母と話し合い、まずは食費を毎月一定額送ることにしました。「困ったら言って」ではなく、「これは生活費として毎月送る」と最初から決めたそうです。あわせて、自治体の地域包括支援センターにも相談し、見守りや配食サービスの情報を集めました。
「母は、“そんな大げさなことしなくていい”と嫌がりました。でも、倒れてからでは遅いと思ったんです」
現在、雅子さんは以前ほど食事を抜かなくなったといいます。配食サービスも最初は抵抗があったものの、今では「温かいものが届くと助かる」と話すようになりました。
「母が倒れていたのを知って怖かったのはもちろんですが、それ以上に、“頼れない”と思わせてしまっていたことがショックでした」
親の「大丈夫」は、ときに気遣いであり、諦めでもあります。元気そうに見えても、実際には暮らしのどこかを削って持ちこたえていることがあります。
「1日2食で十分」という母の言葉は、本音ではありませんでした。親は助けを求めないまま限界まで我慢してしまうことがある、その現実を芳恵さんは突きつけられたのです。
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