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統計上、分散投資も最初は損失拡大しがち「おおむね5年の辛抱」が重要に
個人の分散投資なら、国内外の債券と株式で十分だが…
資産運用は、収益性のよさを見込める投資対象をひとつ見つけられれば、その資産に集中投資を行えばよいのですが、実際には困難なことです。そのために、収益の安定化を目的とした「分散投資」が必要になってくるわけです。
分散投資については、組み合わせ方について、大変細かく見る意見もあります。しかし、個人の場合には、公的年金の資産運用で行われている内外の債券と株式の4資産に均等に投資をする配分を基本とすれば、問題は少ないでしょう。
この資産配分について、リーマン・ショック(2008年)とITバブル崩壊(2000年)における市場の実績を用いたシミュレーションを行ったところ、どちらの場合についても、実質的な運用利回りの累積値は一時的に低下するものの、その後の市場回復に伴い、数年後には運用利回りも期待される水準まで回復するというデータもあります(年金積立金管理運用独立行政法人「基本ポートフォリオの変更について」2020年)。
しかし、過去の統計と将来の収益性についての一般的な予測をベースに試算すれば、内外の株式、債券の4資産に分散投資を行った場合でも、元本割れがおおむねなくなるには、5年は必要だと思われます(筆者試算)。
逆にいえば、シニアにとって5年以下の、運用期間、想定投資期間(インベストメント・ホライズン)が短い資金は、銀行預金、個人向け国債(固定金利型)での運用が適切であり、原則として、分散投資を行っても、株式・債券に投資をする運用には適さないのです。
投資開始の数年は「元本割れの可能性大」と知っておこう
内外の株式と債券による4資産均等投資による資産運用を始めた最初の数年は、収益の積み上がりが少ない一方、価格の変動性は最初から大きいため、結果として投資を開始した直後の時期は「元本割れ」による損失額の増加を覚悟する必要があるということになります。
しかし、そうした心構えを持ち、「投資開始の数年は、元本割れで損失額が拡大する可能性が大きい」と思っていれば、いわゆる不意打ちを受けることはなくなります。
価格下落の心理的ショックは大きなものですから、資産運用を始めたら頻繁に価格を見るようなことは避けたほうがよいでしょう。
米国の長期投資で有名な株式投資家で、我が国の総合商社の筆頭株主となったウォーレン・バフェット氏ですが、彼は「株式投資を行うなら郵便事情の悪いところに住んだほうがよい」といった趣旨の言葉を述べたといいます。つまり、新聞や株式レポートで価格変動のデータなどを頻繁に眺めていると情報に惑わされてしまい、投資にはあまりよくないということです。
これに近いことは「行動経済学」という心理学を取り入れた経済学でも、「プロスペクト理論」として取り上げられています。
人の価値の感覚は、値下がりの損のほうが、値上がりの得より2倍以上強く感じることがわかっています。そのために、投資行動では損失回避を優先する行動が起こり、場合によっては投資の意欲を失って投資から撤退してしまい、長期的にはよい投資収益を得られないということが起こります。また、この現象が実際の株式市場で発生しているという報告もあります(岡田克彦「なぜ日本人は株式資産を持たないのか?」2021年)。
実際、英国の確定拠出年金制度のひとつである国家雇用貯蓄信託(NEST:National Employment Savings Trust)では、30歳までの7、8年間は債券への投資を増やして運用リスクの小さい資産配分での運用を行い、損失を経験した人が確定拠出年金への拠出をやめないように工夫をしています。
シニア世代の方々の資産運用には、こうした認知のバイアス(歪み・偏り)があることを知っていることが重要です。
そこで、初めて投資に取り組むシニアの方は、英国のNESTの例に倣い、投資の内容を内外債券4資産均等投資から、国内債券が多めの資産配分となっている安定重視型バランスファンドなどと呼ばれる商品で投資を開始することも考えたいところです。
※ 本記事は書籍の内容を抜粋・掲載したものであり、現在の市場環境とは異なる場合があります。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
藤波 大三郎
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