墓じまいは「正解」ではなく「選択」
この経験を振り返り、誠一さんは「やらなければよかったとは思いません。ただ、少しの後悔はありますね。もっと丁寧に向き合うべきだったとは感じています」と話しています。
墓じまいは、費用や管理の問題だけではありません。そこには、家族の記憶や価値観、人とのつながりが深く関わっています。
例えば、年間1万5,000円の管理費も、30年で45万円になります。さらに交通費や時間を含めれば、負担は決して小さくありません。一方で、「その場所に行けば思い出せる何か」を失うことの重みは、数字では測れないものです。
墓じまいを検討する際には、次のような考え方が大切です。
まず、「なぜ墓じまいをするのか」にきちんと向き合うこと。費用なのか、距離なのか、それとも後継者の問題なのか。理由が曖昧なまま進めると、後から迷いが生じやすくなります。
次に、親族との共有です。「報告」ではなく「相談」という形で関わることで、感情的な衝突を防ぎやすくなります。
そして、供養の形を具体的にイメージすること。合祀墓なのか個別安置なのかによって、後からの選択肢は大きく変わります。
気持ちの整理にも時間をかける
墓じまいは手続きを進めれば完了しますが、気持ちの整理はそれとは別の時間軸で進みます。誠一さんは今でも、年に一度はお寺に行き、元の墓があった場所まで足を運ぶことがあるそうです。
「お墓はないとわかっていても、あの場所に行くと少し落ち着くんです」
その行動は、合理性では説明できないものかもしれません。しかし、それもまた自然な感情です。
墓じまいは、将来の負担を減らすための現実的な選択肢の一つです。一時的に費用はかかるものの、将来における管理面の負担軽減というメリットもあります。一方で、感情的な喪失感や親族関係への影響など、目に見えない側面も無視できません。
重要なのは、墓じまいをすることが「正しいかどうか」ではなく、「自分や家族が納得できるかどうか」です。時間と対話を重ねながら選んだ結論であれば、その選択はきっと後悔の少ないものになるはずです。
新井智美
トータルマネーコンサルタント
CFP®
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