「月5,000円の医療保険、すぐに入院して給付金をもらえば元が取れるやろ?」大阪のとあるファミレスで、保険代理店のプランナーにそう熱弁する年収500万円のマサルさん(仮名・53歳独身)。「保険は計算通りにいかないときのお守りです」と反論する保険代理店。果たして保険に「元を取る」という考え方は正しいのでしょうか。多くの日本人が陥りがちな「保険=得をするツール」という誤解と、民間保険との正しい付き合い方について、1級FPの桐山昌也氏が解説します。
3. 保険が真価を発揮する場所
では、保険は不要なのでしょうか?
答えは「NO」です。保険の真の役割は、「起きたら人生が即座に破綻する巨大なリスク」を他者に肩代わりしてもらうことにあります。
・医療保険(小さなリスク): 数十万円の損。貯金があればカバー可能であり、本来は保険に頼る必要性は低い。
・自動車保険・賠償責任保険(巨大なリスク):たとえば運転中に事故を起こし、相手を死傷させて数億円の賠償命令が出た場合。これは個人の貯金では到底賄えず、人生は即座に破綻。
一生かかっても払いきれない数億円の負債から身を守ること。これこそが、高い手数料を払ってでも民間保険を利用する唯一にして最大の意義です。
保険は「損をして当たり前」が一番幸せな理由
保険で「元が取れなかった」と悔しがるのは、いい換えれば「大きな不幸に見舞われなかった」という最高の幸せを享受した証拠です。
本当の安心は、「破綻を防ぐ最低限の保障」と「自由に使える自分の貯金・投資」のバランスのなかにあります。
「その保障は、本当に入っていないと人生が詰むものか?」という基準で、一度ご自身の保険を見直してみてはいかがでしょうか。浮いたお金は、あなたの人生を豊かにするために使いましょう。
桐山 昌也
株式会社ライトオブライフ
代表/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
株式会社ライトオブライフ
代表/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1976年生まれ。京都大学経済学部卒、MBA(経営学修士)取得。銀行およびメーカーにて、スイス駐在や大学院派遣を含むエリートキャリアを歩む。
金融業界の内側に身を置く中で、世に溢れる「無料相談」の実態が、顧客不在のセールス手法に偏っていることに強い疑問を抱く。「本当にお客様の立場に立った、嘘のないアドバイスを届けたい」という理想を追求するため、2024年に独立。
現在は大阪を中心に、自ら足を運ぶ「出張型FP」として活動。保険や株の販売を一切行わない「完全中立の立場」を貫き、金融機関での実務経験を活かした「難しい手続きまで並走できるプロ」として、家計や資産運用の悩みに寄り添っている。
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