「口座を凍結しました」出金を阻むエラーと突然の強制退会
数週間後、利益の一部を引き出そうとユウスケさんは投資アプリの出金申請ボタンをタップしました。
しかし、画面に「マネーロンダリングの疑いがあるため口座を凍結しました」というエラーメッセージが。
「出金したいんですけど、エラーになってしまって……。どうしたらいいですか?」
慌ててLINEグループで「先生」に事情を尋ねた直後、グループから強制的に退会させられ、『メンバーがいません』という表示に変わってしまいました。
しばらくLINEのトーク画面を見つめて冷静になり、ユウスケさんはようやく自分が「警察を名乗る詐欺師」が仕掛けた罠にハマったことに気づいたのです。
すでに手遅れであることを理解し、「入金してしまった150万円はもう二度と戻ってこない」という絶望的な事実を認識した次の瞬間。
「ふざけるな! なにが警察だ、騙しやがって……! 俺の貴重な老後資金を返せよ!」
激しい怒りが沸きあがったユウスケさんは、思わず握りしめていたスマートフォンを床に叩きつけました。
被害額1,800億円超…データが示す「特殊詐欺」の実態
「こんな単純な詐欺に引っかかるわけがない」と思う人も多いでしょう。しかし、ユウスケさんのケースは決して珍しくありません。
警察庁が公表した「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」のデータから、SNSを利用した詐欺被害の実態が浮き彫りになっています。
令和7年のSNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は1万5,142件、被害額は1,827.0億円にのぼり、特殊詐欺の被害額(1,414.2億円)を上回る極めて深刻な事態となっています。
なかでも、犯行グループはInstagramやFacebookなどのプラットフォームを利用して被害者に最初の接触を図り、そのあとLINEなどのクローズドなチャットグループへ誘導して洗脳していく手口が主流となっています。
実際、警察庁はこれらの詐欺に利用されたLINEアカウントの利用停止や削除を促すため、令和7年中だけでLINEヤフー株式会社に対して1万8,214件(うちSNS型投資・ロマンス詐欺9,505件)ものアカウント情報を提供しています。
犯行グループは、警察や有名人などの「権威」を悪用した偽アカウントを平然と作成します。ユウスケさんのように、「警察が推奨しているのだから安全だ」という信頼を逆手に取り、つけ込むのが現代のSNS型投資詐欺の恐ろしい点です。画面上のロゴや親切な言葉の裏には、資産を奪い取ろうとする犯罪組織の本性が隠されているのです。
ユウスケさんのような詐欺被害を防ぐためには、「SNS上の知らない相手からの投資話はすべて詐欺」と疑う警戒心が必要です。警察や公的機関、有名人がダイレクトメッセージで投資を勧めたり、LINEグループへ誘導したりすることは絶対にありません。
もしSNS上で投資に勧誘され、指定された個人名義や法人名義の口座へ現金を振り込むよう指示された場合は、決して応じず、すぐに警察の相談専用電話(#9110)などに相談してください。
[参考資料]
警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」
