「連帯保証が外れるなら、それでいい」
「連帯保証を外せる可能性がある」
決算書を見たM&A仲介会社から言われた言葉に、田辺社長は思わず縋りついた。
会社の純資産はぎりぎりプラス。そのため評価額は「1円」という条件だった。
田辺社長としても、会社を高く売りたいという思いがなかったわけではない。しかし、それ以上に大きかったのは「連帯保証から解放されたい」という一点だった。
M&A仲介会社からもこう言われた。
「連帯保証が外れるだけでもよしとしませんか。社員の雇用も守れます。得意先にも面目が立ちます」
田辺社長はその言葉を信じ、仲介契約を締結した。
1,000万円の成功報酬
その契約から約2ヵ月後、仲介会社から「買い手候補が見つかった」と連絡があった。同業ではなかったが、書籍出版や広告業など、幅広く事業展開している会社だった。書籍の運搬業務があり、いくらでも仕事があるのだという。
(グループ会社には運ぶものがたくさんありそうだ。これはよい相手かもしれない)
田辺社長は心の中で小さくガッツポーズをした。
契約を進めるにあたり、仲介会社への成功報酬は1,000万円だった。仲介会社からは「仲介料は、一般的には譲渡額の5%程度ですが、御社の場合には譲渡額が1円のため、最低報酬1,000万円が適用されます」と言われた。
田辺社長は迷ったが、「これで2億円の連帯保証から解放されるなら」と思い、個人で長年積み立てていた定期預金を解約して支払う算段をした。
そして「連帯保証は譲渡から3か月以内に解除する」という譲渡契約を交わした。
