81歳の暮らしをむしばむ“終わらない扶養”
「もう、母親でいることに疲れました」
そう漏らしたのは、81歳の美智子さん(仮名)です。
年金は月17万円ほど。夫を亡くしてからは一人暮らしのはずでしたが、実際にはそうではありませんでした。56歳の長男と52歳の次男が、いずれも安定した仕事に就かないまま、長く実家に依存していたのです。
「若いころは、そのうち何とかなると思っていました。少し休めば働き出すだろうって。でも、気づけば2人とも50代になっていました」
長男は十数年前に離職して以降、ほとんど外で働いていません。次男も短期の仕事を転々とした後、ここ数年は家にいる時間が増えました。2人とも食費や光熱費を十分に入れることはなく、日用品や携帯代、時には医療費まで、美智子さんが肩代わりしてきたといいます。
「お母さん、今月ちょっと厳しい」
「あと1万円だけ出してくれない?」
「就活するから、その間だけ」
“その間だけ”が、何年も続きました。
美智子さんは当初、年金と少しの貯蓄でやりくりしていました。持ち家のため家賃負担はなかったものの、3人分の食費、上がり続ける光熱費、家電の買い替え、息子たちの細かな立て替えが重なります。断ろうとすると、家の空気が一気に悪くなりました。
「長男は黙り込むんです。次男は不機嫌になって、ドアを強く閉めたりする。怒鳴るわけじゃないけれど、こっちが悪いことをしているような気持ちになるんです」
近所や親戚には、詳しい事情を話してきませんでした。
「恥ずかしかったんです。“まだ息子さんたち独身なの?”くらいなら笑って流せても、“働いていない”とは言えませんでした」
けれども、現実は少しずつ美智子さんの生活を削っていきました。冷蔵庫の中身を気にしながら買い物をするようになり、自分の服や通院の優先順位は後回しになりました。以前は欠かさなかった友人との外食も減り、電気代の請求書が届くたび、ため息が出たといいます。
