妻「本当に大丈夫なの?」退職金950万円を残して起業…成功を掴む〈まさかの結果〉
そんな矢先、高校時代の同級生と偶然再会し、「起業に加わらないか」と誘われました。Aさんは、退職金の一部(400万円)を資金に充て、同級生たちに参画。
妻から「本当に大丈夫なの?」と心配されましたが、住宅ローンの返済を後ろ倒しにして手元に現金を残せたからこそ、踏み出すことができました。
結果として起業は成功。現在の月給は約150万円になり、今では年金の繰下げ受給を検討するほど、生活に余裕が生まれました。
【FPが解説】「退職金でローン完済」は後悔の元?人生の選択肢を広げる「家計の流動性」
Aさんのケースには、老後資金を考えるうえで重要な2つのポイントがあります。
一つは「団信(団体信用生命保険)の活用」です。完済時の年齢をなるべく「後ろ倒し」にするほうが、団信の有効性が高まるという考え方です。
もう一つは「家計の流動性」で、これが最も大切です。物価は上昇中で、円安が進行している現在、時間と共に円の価値はどんどん下がっていくリスクがあります。
しかし、私たちの暮らしの基本となるお金は、やはり円です。不測かつ突発的な事態が発生したとき、手元にある現金が最も役に立ちます。そして、不測かつ突発的な事態とは、なにも事故や事件、病気やケガ等のネガティブな出来事とは限りません。
Aさんのように、起業に誘われるかもしれませんし、世界一周旅行のチャンスが巡ってくるかもしれません。あるいは、お子さんが私立の医学部や芸術学部に合格するかもしれません。
手元に現金があればこそ、チャンスが活き、選択の幅が広がることだってあるのです。ここでいう現金とは、Aさんの退職金のような、まとまったお金だけではありません。
日々の家計のなかで、少しずつでもお金を貯めておき、不測の事態に備える。それが「家計の流動性」を保つということなのです。
誰もが「退職金で住宅ローンの繰り上げ返済を」と考えがちですが、それは必ずしも正解とは言えません。せっかくの団信のメリットを活かせなくなるだけでなく、「家計の流動性」を失うことにもつながるからです。
手元に現金を残すことで、老後の人生の選択肢が広がり、思いがけないチャンスを掴むことができるのです。
大泉 稔
ファイナンシャルプランナー
