離婚後を見据えた現実的な試算
由美子さんは、夫に離婚を伝える前に、その後の生活についても現実的に考えていました。
夫婦の共有財産は原則として2分の1ずつ分けられます。この夫婦の場合、世帯貯蓄は1,800万円。由美子さんがコッソリためていた“へそくり”600万円も原則として共有財産とみなされる可能性が高く、合計2,400万円となります。特有財産がない場合、この2,400万円は原則として半分ずつ、1,200万円ずつに分割されます。
また、自宅も財産分与の対象となりますが、由美子さんはそれを求めていませんでした。「家はいらない、その代わりに自由になりたい」――住まいを手放すことで、スムーズに離婚できればと考えていたのです。
さらに、年金分割も重要なポイントです。婚姻期間中に形成された厚生年金は、原則として最大50%まで分割されます。この夫婦の場合、正さんの厚生年金(報酬比例部分)のうち、婚姻期間中に対応する記録が最大50%まで分割され、由美子さんの将来の年金額にも反映される見込みでした。
こうした話を弁護士に聞いた上で、由美子さんは離婚を切り出しました。しかし正さんは、強く拒否します。
「勝手すぎる。俺は絶対に認めない」
正さんにとっては、突然すぎる話。長年、家族のために働いてきたという自負もあり、受け入れられるものではなかったのです。
話し合いは平行線のまま進みません。その結果、二人が選んだのは「別居」という形でした。夫は「しばらく離れたら気が済むだろう」と考えているようですが、由美子さんは逆に、「距離を取ることで、夫もそのうち別れを受け入れるのでは」と考えたといいます。
老後の夫婦に突きつけられる現実
正さんは、由美子さんとの平穏な老後を想像していたことでしょう。しかし、青天の霹靂で別居という形になりました。
一方、由美子さんの生活も、決して余裕のあるものではありません。パート収入とへそくりの取り崩しでなんとか成り立っていますが、それは、60代前半という年齢による余裕があるからともいえるでしょう。最終的に夫婦がどのような形に落ち着くのか、まだ先は見えない状況です。
いずれにしても、定年はゴールではありません。むしろ、これまで見えなかった夫婦の距離が、はっきりと浮き彫りになる節目です。
仕事という緩衝材がなくなり、子どもも巣立ったあとに残るのは、2人だけの時間。その時間に耐えられるかどうか。それが、老後の夫婦関係を大きく左右します。
厚生労働省の「人口動態統計月報年計(概数)の概況」によれば、令和6年の離婚件数は18万5,895組(前年より2,081組増)。このうち婚姻期間20年以上の熟年離婚は4万686組(前年より876組増)で、全体の約2割を占めています。
一緒の家に住んでいても、夫婦であっても、内面に気づかないことは多いものです。「熟年離婚なんて、しょせん他人事」――そう思っていると足元をすくわれるかもしれません。
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