今回は、親の介護や看病への貢献度を相続分に反映させる方法を見ていきます。※本連載は、相続専門の弁護士である大竹夏夫氏の著書、『老活弁護士®が教えます!わかりやすい遺言書の書き方』(週刊住宅新聞社)の中から一部を抜粋し、いわゆる「争族」を防ぐための遺言書活用の留意点を見ていきます。

肉体的、精神的負担が大きい介護だが・・・

3人の兄弟のうち、長男が両親と同居して面倒を見ていた。最後の数年間は介護で苦労したというケース。介護はやった人でないとわかりませんが、その負担は小さくありません。肉体的な負担もさることながら、精神的な負担がかなりあります。

 

長男夫婦・家族が一家総出で父・母を介護することが珍しくありません。しかし、そうした苦労は、なかなか相続では考慮されません。

 

このようなケースでは、面倒を見てもらった親のほうが、長男や長男の妻に対して、他の相続人よりも取り分を多くする遺言書を作っておくことをお勧めします。

貢献に応じた財産を相続できる「寄与分」という制度

相続手続には「寄与分」という制度があります。

 

たとえば、長男が父親の家業を手伝って事業が発展し父親の資産が増えたとか、長女が母親の看病をして出費を抑えたなどの事情があったときは、法定相続分どおりに分割するとかえって不公平になってしまいます。そこで、その人は、貢献した程度(寄与分)に相当する財産を多めに相続できるとしたのが、寄与分の制度です。

 

寄与した人にどれだけ多くの遺産を与えるかは、相続人全員で話し合って決めます。もし話がまとまらないときは、家庭裁判所の調停または審判の手続をして決定します。

 

なお、寄与分が認められるのは相続人だけです。長男の嫁や内縁の妻などはどんなに貢献しても、寄与分は認められないので、このようなときは遺言書を書いて遺贈しておく必要があります。

本連載は、2016年6月29日刊行の書籍『老活弁護士が教えます!わかりやすい遺言書の書き方』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

老活弁護士®が教えます! わかりやすい遺言書の書き方

老活弁護士®が教えます! わかりやすい遺言書の書き方

大竹 夏夫

週刊住宅新聞社

「老活」は、「老後に備える準備活動」です。「老活」のなかでも、とても重要なのが「遺言書の作成」です。 自分が残す財産やその他のことを死ぬ前に決めておく。これは実は当たり前のことだと思うのです。 残された人のため…

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