(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもが実家で暮らし続けること自体は、珍しいことではありません。内閣府『令和7年版 高齢社会白書』によると、65歳以上の人のいる世帯のうち「親と未婚の子のみの世帯」は20.2%。物価高や非正規雇用の増加、住宅費負担の重さなどを背景に、親子同居は一つの生活スタイルとして定着しつつあります。しかし、その状態が長期化し、親の老後資金や生活設計に影響を及ぼし始めると、家族関係は少しずつ変質していきます。

「いつまで家にいるんだ…」65歳父が抱えた不安

誠さん(仮名・65歳)は、37歳の長男・悠人さん(仮名)と二人暮らしを続けてきました。

 

中小企業の営業職として働いてきた誠さん。65歳を迎えた現在も嘱託社員として勤務しており、年収は約450万円です。

 

一方、悠人さんは数年前に会社を退職した後、転職を繰り返していました。現在はアルバイト収入が中心で、生活費の多くを父に頼っている状態です。

 

「最初は、“次の仕事が決まるまで”という話だったんです」

 

食費、光熱費、通信費。悠人さんは家にお金を入れていませんでした。誠さんには、「息子が困っているなら助けたい」という気持ちがあったといいます。

 

「親ですからね。放り出すみたいなことはしたくなかった」

 

しかし、状況は少しずつ変わっていきました。誠さんは65歳を迎え、年金生活が現実味を帯び始めます。

 

退職金や貯蓄を合わせても、老後資金は決して潤沢ではありません。現在の貯蓄は約1,000万円。住宅ローンは完済していますが、今後の医療費や介護費を考えると、不安は大きかったといいます。

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、平均消費支出が可処分所得を上回っており、多くの世帯が貯蓄を取り崩しながら生活しています。誠さんも、「働けなくなった後」を考えるようになっていました。

 

そんな中、ある日の夕食時、悠人さんが何気なく口にした言葉に、誠さんは凍りつきます。

 

「俺、このままここに住もうと思ってる。別に今の生活で困ってないし。父さんも一人よりいいでしょ?」

 

誠さんは、その場では強く言い返せませんでした。しかし、その夜、通帳を見ながら初めて強い恐怖を感じたといいます。

 

「このままだと、自分の老後が持たないかもしれない」

 

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