(※写真はイメージです/PIXTA)

会社を守るために差し出したはずの資金が、将来の「課税対象」になる――。中小企業経営者の間で一般的に行われている、社長から会社への資金提供。この「役員借入金(社長から見れば貸付金)」には、見落とされがちな罠が潜んでいる。特に相続の局面では、その性質が一変し、思わぬ形で遺族に税負担を生むことがある。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

「回収できない」は通用するのか

相続人はさらに、「どうせ回収できない資金だ」と主張したが、この点についても裁決は厳しい判断を示している。

 

税務上、貸付金を「ゼロ」や「減額」として評価するには、以下のような客観的な事実が必要となる。

 

・破産・清算などの法的手続

・債務超過が継続

・事業再建の見込みがない

 

実際、この事案でも会社は赤字であったものの、債務超過ではなく、事業も継続しており、資産が負債を上回っていた。そのため、「回収が不可能または著しく困難」とは認められなかった。結果として、貸付金は全額が相続財産として評価されることとなった。

黒字企業ほど難しい「貸付金の解消」

では、この問題にどう対処すべきか。

 

都内の税理士に取材すると、まず赤字企業の場合、比較的対応の余地があるという。

 

社長が会社に対する貸付金(債権)を放棄すると、その分は会社側では「債務免除益」として利益に計上される。しかし、赤字企業であれば過去の繰越欠損金(いわば過去の赤字)と相殺できるため、結果として法人税の負担を抑えながら債務を圧縮することができる。

 

つまり、「赤字を使って借金を消す」というイメージだ。すでに赤字を抱えている企業にとっては、比較的現実的で有効な整理手法といえる。

 

一方で、黒字企業の場合は事情が大きく異なる。

 

社長が貸付金を放棄すると、会社にとっては「本来返さなければならなかった借金がなくなる」ことになる。この"得をした分"が利益とみなされ、「債務免除益」として課税対象になるのだ。

 

たとえば1,000万円の借金を帳消しにしてもらった会社は、その瞬間に「1,000万円儲かった」のと同じ扱いになる。実際に現金が入ってきたわけではないにもかかわらず、税務上は利益が出たと判断されるため、その分に対して法人税が課される。

 

その結果、「借金を減らしたはずなのに、逆に税金の支払いが増える」という現象が起きる。何も考えずに債権放棄を行うと、かえって資金繰りを圧迫するリスクすらあるという。

現実的な対応は「時間をかけた調整」

このため黒字企業では、タイミングの見極めが極めて重要になるという。

 

具体的には、設備投資によって減価償却費が大きく計上される年や、一時的に業績が落ち込むタイミングに合わせて債権放棄を行うことで、利益と損金を相殺し、税負担を抑える工夫が求められる。

生命保険スキームは「調整ツール」へ

さらに、生命保険を活用し、損金算入される保険料と債務免除益をバランスさせながら段階的に解消していく方法もある。

 

具体的には、保険料を損金(経費)として計上しながら、同時に貸付金の一部を債務免除することで、会社に生じる利益(債務免除益)と損金(保険料)を相殺し、税負担を抑えつつ貸付金を減らしていくという仕組みだ。

 

もっとも、こうした手法については、2019年度税制改正以降、大きく環境が変わっている。現在では、支払った保険料のすべてを経費として落とせるわけではなく、その一部は資産として計上する必要があるなど、損金算入できる割合に制限が設けられている。その結果、従来のように保険料によって大きく利益を圧縮し、その圧縮分と債務免除益をきれいに相殺するような使い方は、制度上難しくなっている。

 

そのため、現在の実務においては、生命保険は大きな節税を狙うための手段というよりも、債務免除益によって発生する利益とバランスを取りながら、税負担を平準化するための"調整ツール"として位置づけられている。生命保険だけに依存した対策は現実的とはいえず、より総合的かつ長期的な税務戦略が求められる状況にある。

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