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コスト上昇が直撃する中小企業
原材料価格や人件費、エネルギーコストの上昇が続くなか、中小企業の倒産が増加している。帝国データバンクの調べでは、2026年1〜4月の累計では346件に達しており、過去最多ペースで推移している。
注目すべきは、単なる不況型倒産ではない点だ。建設業、製造業、小売業、飲食業、運輸業など幅広い業種で、「コスト増を販売価格へ転嫁できない企業」が厳しい状況に追い込まれている。背景には、長期デフレ下で定着した「値上げを避けながらコスト削減で耐える経営」が、インフレ局面でいよいよ転換を迫られている現実がある。
過去最多となった「物価高倒産」
帝国データバンクによると、今回の物価高倒産で最も多かった要因は原材料価格の高騰だ。全体の半数以上が原材料高の影響を受けており、それに加えて電気・ガス料金の上昇、燃料費高騰、物流費増加、人件費上昇など、複数のコスト負担が同時に企業経営を圧迫している。
かつては、一時的なコスト増であれば企業努力によって吸収できる場面もあった。しかし現在は、あらゆるコストが同時に上昇しており、とりわけ価格交渉力の弱い中小企業ほど影響を受けやすい構造となっている。
なかでも人手不足による賃上げ圧力は中小企業に重くのしかかっている。大企業では初任給引き上げの動きが相次いでいるが、その影響は中小企業にも波及している。
一方、中小企業の多くは賃上げ分を十分に販売価格へ転嫁できておらず、利益率の低下につながっている。
帝国データバンクの分析では、小規模企業の倒産比率が高いことも特徴となっている。資金余力や価格交渉力に乏しい企業ほど、急激なコスト上昇を吸収しきれないためだ。すなわち現在の物価高倒産は、「売上が急減した企業」の問題ではなく、長年にわたって薄い利益率で経営を続けてきた企業が急激なコスト上昇に耐えきれなくなっている現象といえる。
建設業で進む「利益なき受注」
とりわけ深刻なのが建設業だ。帝国データバンクの分析では、建設業の物価高倒産は33件となり、前年同月比で大幅に増加した。なかでも木造建築工事業の倒産が目立っている。
背景には、建築資材価格の高騰に加え、人手不足による人件費上昇、外注費増加、工期長期化などがある。問題なのは、工事契約時点で価格が固定されるケースが多いことだ。契約後に資材価格が上昇しても、追加コストを十分に発注側へ転嫁できない企業は少なくない。
その結果、「仕事はあるのに利益が出ない」という状況が生まれている。売上自体は維持されていても、利益率が急速に低下し、最終的には資金繰り悪化へつながっていく。とりわけ下請け構造の強い企業では、「値上げを言い出しにくい」という商慣習も根強く残っている。価格交渉力の弱い企業ほどコスト増を自社で抱え込みやすく、受注があるにもかかわらず利益が残らないという逆説的な状況に陥りやすい。
小売・飲食業でも進む「価格転嫁難」
小売業や飲食業でも厳しい状況が続いている。
帝国データバンクは、消費者の節約志向が依然として根強いことを指摘しており、食品や日用品の値上げが相次ぐなかでも、企業側はコスト増を十分に販売価格へ転嫁しにくい状況に置かれている。
飲食業では、食材価格・光熱費・人件費の上昇が同時に経営を圧迫している。しかし価格を引き上げれば客足が遠のくとの懸念も強く、利益を削りながら営業を続ける店舗も少なくない。
日本では長年、「値上げしないこと」が競争力とされてきた。外食チェーンの低価格競争や価格据え置き戦略はその象徴ともいえる。消費者にとっては恩恵だった一方、企業側は利益率を削り続ける構造を抱え込んできた。しかし現在のインフレ局面では、「安さを維持する経営」そのものが企業体力を奪い始めている。
デフレ下で定着した「耐える経営」
1990年代以降、日本経済は長期デフレ環境に置かれてきた。そのなかで企業は値上げを避け、コスト削減によって利益を確保する経営を続けてきた。人件費抑制や薄利多売は、多くの業界で半ば常態化していた。
特に中小企業では、「利益を削ってでも受注を守る」という考え方が広がっていた。取引先との関係維持を優先し、価格転嫁を避ける企業も少なくなかったようだ。
デフレ時代には、それでも事業は成立した。物価が大きく上がらなければ、低い利益率でも継続は可能だったからだ。しかし原材料費・人件費・エネルギーコストが同時に上昇するインフレ局面では、「利益を削って吸収する」経営そのものが成り立ちにくくなっている。帝国データバンクのデータが示しているのは、そうした"耐える経営"が転換点を迎えているという現実だ。
「値上げできる会社」と「できない会社」
中小企業では二極化も進んでいるといってよさそうだ。独自技術やブランド力、高付加価値サービスを持つ企業は、一定の価格改定を進めながら利益を維持しやすい。固定客を持つ企業も、価格転嫁が比較的進めやすい状況にある。
一方、価格競争型の企業は厳しい状況に置かれている。下請け依存が強く差別化が難しい企業ほど価格転嫁が進まず、コスト増を自社で抱え込みやすい。
帝国データバンクの分析でも、価格転嫁難に苦しむ中小・小規模事業者の多さが示されている。「売上がある会社」が生き残る時代ではなく、「適正価格を確保できる会社」が生き残る時代へと変わり始めていると言ってよさそうだ。
物価高倒産は"経営転換"を迫っている
過去最多となった「物価高倒産」は、単なる景気悪化ではないという識者が多い。それは、日本企業が長年続けてきた「値上げを避けながら利益を削って耐える経営」が、インフレ局面で根底から揺らぎ始めていることを示していると言えるだろう。
今後の中小企業に求められるのは、「我慢する経営」を続けることではない。適正な利益を確保しながら継続的な価格改定を行い、「値決め」を自社の手に取り戻せるかどうかが、企業存続を左右する時代に入りつつあるようだ。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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