同期は高級老人ホーム入居…「早く生活を見直していれば」
年金収入が減ったこともあり、それまでの生活レベルで暮らしていくことは不可能です。とはいえ、自宅の売却と貯金で、手元には約2,000万円以上は残っています。
そのため、当初、正雄さん夫婦は中古マンションの購入も検討したといいます。地方都市、2人暮らしのコンパクトな築古であれば、1,000万円台の物件も少なくありません。
しかし、不動産会社から購入後の管理費や修繕積立金の説明を受けたとき、「この先、医療費や介護費用が必要になったら」「90歳、100歳まで生きたらどうなる」と、残りの資産の大半を住宅購入に使うことに不安を感じたのです。
「もう見栄を張る年齢でもないな、買うのはやめよう」
夫婦で話し合った末に選んだのが、月8万円の賃貸アパートでした。資産をできるだけ手元に残し、老後資金の寿命を延ばしたい。多少は子どもや孫にお金を残したい。目先の世間体や見栄を完全に捨てた瞬間でした。
「元同期が高級老人ホームに入居したらしい。入居一時金は3,000万円以上、月額費用も30万円を超える施設だそうで。ちゃんと考えてやりくりしていたんだろうね」
かつて同じ会社で働いていた仲間との違いに、苦笑する正雄さん。「でも、アパートといっても意外と快適だよ」という正雄さんに対して、美智子さんは「もっと早く生活を見直していればね」と何度も後悔を口にしているそうです。
支出はできるだけ年金収入内に留め、突発的な支出にも耐えられるよう、貯蓄額をできるだけ崩さない――工夫を考えながらの生活が続いていきます。
老後を守るために大切な考え方
このような事例は、決して珍しいものではありません。現役時代に高収入だった人ほど、生活レベルを下げることが難しい傾向があります。
しかし、老後の家計は現役時代とは構造が大きく異なります。給与収入はなくなり、基本は年金が中心になるため、資産を取り崩す生活では、「支出の大きさ」がそのまま資金寿命に直結します。
周囲の評価や世間体は、時間とともに変わります。しかし老後資金は、一度失えば取り戻すことができません。 老後生活で本当に大切なのは、「人にどう見られるかではなく、安心して長く暮らせること」です。
正雄さん夫婦に関していえば、老後破産という最悪のケースになる前に、世間体や見栄を捨て、堅実な暮らしを選べたことは不幸中の幸いです。
退職は人生の終わりではなく、新しい生活の始まりです。そのときに必要なのは、現役時代の肩書きではなく、身の丈に合った暮らし方なのかもしれません。
新井智美
トータルマネーコンサルタント
CFP®
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