ピーク年収1,000万円超の元エリート会社員
大阪府内に住む山本健一さん(仮名・72歳)は、大手メーカーで管理職を務め、50代後半には年収1,000万円を超えていました。60歳で定年退職後は再雇用で65歳まで勤務し、完全退職時点での金融資産は退職金を含めて約5,000万円。住宅ローンは完済済みで、公的年金は月約22万円、企業年金を合わせると月に約28万円の収入がありました。
経済面だけを見れば、老後は安泰といえる状況です。
一方、妻の恵子さん(仮名・70歳)は専業主婦として家庭を守り続けてきました。家計管理、保険の見直し、親戚づきあい、近所の町内会、ゴミ出しの曜日管理まで、生活のすべてを担っていました。
健一さんは「外で稼ぐのが男の役目」という価値観を強く持っており、退職後も家事に手を出すことはほとんどありませんでした。朝起きれば朝食が並び、洗濯物は畳まれている。通帳残高を確認することもなく、「任せておけば大丈夫だろう」と思っていたのです。
退職後の穏やかな時間と、突然の終わり
65歳で完全退職してからの数年間、夫婦は比較的穏やかな生活を送っていました。平日はテレビを見て、週末は近所の喫茶店へ。旅行にも年1回は出かけていました。
しかし70歳の秋、恵子さんが自宅で突然倒れます。診断は急性心筋梗塞。そのまま帰らぬ人となったのです。前触れのない突然の別れでした。
恵子さんの突然の死を受け入れられない健一さんの代わりに、葬儀や相続手続きは長男の大輔さん(仮名・45歳)が主導しました。金融資産は整理され、相続税も発生しない範囲で法的手続きは大きな問題なく終わりました。
しかし、健一さんの生活は、ここから静かに崩れ始めたのです。

