(※写真はイメージです/PIXTA)

日本では、すべての所得を合算して累進税率を適用する「包括的所得税」が採用されています。一方、北欧諸国では、勤労所得と資本所得を区分して課税する「二元的所得税」が導入されています。とくにスウェーデンでは、この仕組みが高福祉国家を支える税制の柱の1つとされています。本稿では、北欧諸国に広がった二元的所得税の概要と、スウェーデンの所得税制度、さらに就労促進を目的とした給付付き税額控除の仕組みについて、2026年3月に『世界の税金はどうなっているのか 富裕層の相続戦略シリーズ【国際編】』を刊行した矢内一好氏がわかりやすく解説します。

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北欧で広がった「二元的所得税」

日本は、すべての所得を合算して累進税率を適用する「包括的所得税」を採用しています。一方、北欧諸国では、勤労所得と資本所得を区分して課税する「二元的所得税」が採用されています。この制度では、勤労所得には累進税率を適用し、資本所得には比例税率を適用する仕組みとなっています。

 

二元的所得税を導入した国と導入年は次のとおりです。

 

・デンマーク(1987年)
・スウェーデン(1991年)
・ノルウェー(1992年)
・フィンランド(1993年)
・アイスランド(1997年)

 

スウェーデンにおける二元的所得税については、馬場義久著『スウェーデンの租税政策―高福祉国家を支える仕組み』(早稲田大学出版部、2021年)で詳しく解説されています。同書では、従来の総合所得税から二元的所得税へ移行した背景についても説明されています。

 

スウェーデンの二元的所得税では、勤労所得に31%と51%の税率が適用される一方、包括的資産純所得には30%の一律分離課税が適用されています。同書によれば、この仕組みは租税回避の要因が比較的少ない制度であるとされています。

日本と北欧の国民負担率の違い

OECDが公表した2022年の国民負担率によると、日本の租税負担率は29.4%であるのに対し、スウェーデンは50.5%と大きな差があります。

 

また、社会保険料の負担率を見ると、日本は19.0%、米国は8.6%、スウェーデンは5.0%となっています。スウェーデンは租税負担率が高い一方で、社会保険料の負担率が比較的低い点が特徴です。

地方税が中心となるスウェーデンの所得税制度

スウェーデンの所得税制度は、国税と地方税が同じ課税標準で課される仕組みとなっています。2025年時点では、国税の最高税率は20%、地方税の平均税率は31.41%です。

 

所得が比較的低い段階では地方税のみが課され、一定の所得額を超えると国税が追加されます。具体的には、年収が625,800スウェーデンクローナ(約1,000万円)を超えると国税が課されます。

 

多くの国では国税としての所得税が中心で、地方所得税は補助的な位置づけですが、スウェーデンでは逆に地方所得税が中心となっています。そして一定の所得を超える部分に対して、国税としての所得税が上乗せされる仕組みです。

就労を促す「給付付き税額控除」

スウェーデンでは、就労を促進する目的で2007年に給付付き税額控除が導入されました。

 

この制度では、勤労所得の金額に応じて減税が行われます。減税率は所得階層ごとに設定されており、低所得者ほど減税率が高く、所得が増えるにつれてその効果は小さくなり、最終的にはゼロに近づく仕組みとなっています。

 

また、制度の適用区分は2022年末までは65歳未満と65歳以上で分けられていましたが、退職年齢の法的変更により、2023年以降は66歳を基準に区分されるようになりました。

 

このようにスウェーデンでは、二元的所得税と給付付き税額控除を組み合わせることで、税負担と就労促進のバランスを図る制度設計が行われています。

 

 

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

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