(※写真はイメージです/PIXTA)

アラブ首長国連邦(UAE)は、中東地域において経済的影響力を強めている国家の1つです。特にドバイはタックスヘイブンとして世界の富裕層や企業を引きつける国際金融都市として発展してきました。日本との租税条約を背景とした投資の流れも生まれていますが、その一方で、租税条約ネットワークを利用したタックスプランニングや、中東地域特有の地政学リスクも存在しています。本稿では、UAEと日本の租税関係、ドバイを経由した投資の仕組み、そしてドバイの潜在的リスクについて、2026年3月に『世界の税金はどうなっているのか 富裕層の相続戦略シリーズ【国際編】』を刊行した矢内一好氏がわかりやすく解説します。

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UAEの構造とアブダビの石油経済

アラブ首長国連邦(UAE)は、7つの首長国から構成されています。首長国の1つであるアブダビはUAEの首都であるとともに、同国の石油産出の拠点であり、石油関連の収入が同国の主要財源となっています。

国際金融都市ドバイとタックスヘイブン

 

ドバイは石油資源が枯渇しているものの、中東地域における経済・金融の中心として発展してきました。また、所得税や相続税のないタックスヘイブンとしても知られています。

 

さらに、ホテルやショッピング施設などのインフラも整備されており、世界の富裕層の移住先として高い評価を受けています。

日本・UAE租税条約と投資の流れ

日本とUAEは2014年に発効した租税条約を締結しています。このため、日本と租税条約を締結していない国であっても、ドバイを拠点として日本に投資を行うことにより、日本との租税条約を利用することが可能となります。

 

日本・UAE租税条約には、石油資金による投資という側面のほか、ドバイというビジネスセンターを経由した投資という側面もあります。

租税条約ネットワークを利用したタックスプランニング

ドバイ経由の投資の背景には、中東以外の国がUAEの締結している租税条約を利用した租税回避の問題も存在します。

 

すなわち、40を超えるUAEの租税条約ネットワークを利用し、UAEとは租税条約があるものの日本とは租税条約のないX国が、「X国 → UAE → 日本」という経路で投資を行うタックスプランニングです。

 

なお、日本はUAEのほかにもクウェート、サウジアラビア、オマーン、カタールといった国々と租税条約を締結していますが、その背景には、オイルマネーによる日本への投資を促進する狙いがあります。

ドバイショックと金融都市の脆弱性

ドバイの発展が常に順調であったわけではありません。ドバイは石油埋蔵量の枯渇を受け、大規模なビジネスセンター構想のもとで多くの外国企業を誘致するため、多額の不動産投資を行い、ビルなどの建設を進めてきました。

 

しかし、2009年11月25日、ドバイの政府系投資持株会社の不動産部門の子会社が債務返済の一時凍結を要請したことにより、信用不安が発生しました。これは「ドバイショック」と呼ばれ、当時の報道では日系企業のドバイ向け債権は約6,600億円に上るといわれていました。

 

その後、アブダビなどからの支援により、この危機は収束しました。

中東情勢とドバイの地政学リスク

また、米国およびイスラエルによるイランへの軍事行動への報復として、UAEにも被害が及んでいるとされています。

 

タックスヘイブンとして経済的に繁栄しているドバイであっても、周辺国の政情不安に起因する潜在的なリスクが存在することが改めて明らかになりました。

富裕層の選択:税負担か政治的安定か

このような状況のなかで、富裕層にとっては、一定のリスクを伴うドバイを選択するのか、それとも税負担はあるものの政治的に安定している欧州諸国を選択するのかという判断に直面することになります。

 

 

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

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