(※写真はイメージです/PIXTA)

食品に対する消費税の減税をめぐり、現在、国民会議などで活発な議論が行われています。税率ゼロは困難とする見解や、減税ではなく給付付き税額控除の導入を主張する意見など、議論は多岐にわたっています。本稿では、こうした政策動向がビール業界に与える影響について考察します。

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食品減税をめぐる議論の現状

食品消費税の減税については、税率をゼロにすることの財政的な難しさが指摘されています。一方で、消費税減税の代替策として、給付付き税額控除の導入を求める声もあり、政策の方向性は定まっていません。こうした中で、軽減税率のあり方そのものも改めて問われています。

ノンアルコール市場の拡大

ビール業界では、健康志向の高まりや若年層を中心としたアルコール離れを背景に、ノンアルコールビールの販売が増加傾向にあります。各メーカーが積極的に商品開発や広告展開を行っていることは、テレビCMの増加からも明らかです。

 

酒税はアルコール分1%以上の飲料に課されるため、アルコールを含まないノンアルコール飲料は課税対象外となります。この点が、ノンアル市場拡大の一因ともいえるでしょう。

酒税制度とビール類の変遷

平成期には、ビールの価格競争の激化を受け、酒税負担を抑えるために発泡酒やいわゆる第3のビールが登場しました。サッポロビールの「極ゼロ」が第3のビールに該当するかが争われた裁判では、2020年12月15日の最高裁判決により、該当しないと判断され、同社の請求は棄却されました。この結果、同社が納付した約115億円の酒税の返還は認められませんでした。

 

また、酒税については、2020年10月以降、ビールの税率引下げと発泡酒・第3のビールの税率引上げが段階的に実施され、2026年10月以降は1キロリットル当たり155,000円に一本化される予定です。

消費税ゼロがもたらす価格構造の変化

現行の消費税制度では、ビールは軽減税率の対象外である一方、ジュースなどの飲料は軽減税率(8%)が適用されています。仮に食品消費税がゼロとなった場合、ノンアルコール飲料はジュースと同様にゼロ税率の対象となる可能性があります。

 

その結果、ビールとの価格差が拡大し、消費者の選択に大きな影響を与えることが予想されます。これは、ビール業界にとって無視できない構造変化といえるでしょう。

サントリーの戦略転換と業界の将来

2026年4月15日、サントリーホールディングスは、一般用医薬品を手がける第一三共ヘルスケアを約2,465億円で買収すると発表しました。人口減少や若年層の酒離れにより国内酒類市場の成長が見込みにくい中、医薬品分野への進出によって健康関連事業を強化する狙いがあるとされています。

 

この動きは、アルコールからノンアルコール、さらには健康分野へとシフトする市場環境を先取りしたものと考えられます。

 

 

矢内一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

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