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トランプ劇場と超富裕層課税 増税か、減税か――税制が映し出すアメリカの真実
奥村眞吾(著)+ゴールドオンライン(編集)
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政策の行方はなお不透明
2026年2月に高市首相が打ち出した「食料消費税の2年間ゼロ」をつなぎとし、その後に給付付き税額控除を導入するというシナリオについては、国民会議などで議論が進められています。6月の中間とりまとめに向けて、関係各層へのヒアリングや外部意見の集約が行われる予定ですが、現時点では最終的な方向性を見通すことは簡単ではない状況です。
「船頭多くして船山に登る」という諺のとおり、多様な立場からの意見が錯綜しており、制度設計はなお流動的です。一方で、これらの政策は内閣支持率や地方選挙にも影響を与えかねないため、国民が納得できる形での制度構築が求められています。
消費税ゼロと税額控除の決定的な違い
まず押さえておきたいのは、食料消費税ゼロと給付付き税額控除の本質的な違いです。
消費税の減税は、食料品を購入するすべての人に一律で適用されるため、所得水準による差は生じません。高所得者であっても低所得者であっても、同じ税率が適用されます。
これに対し、給付付き税額控除は、所得水準や世帯状況に応じて控除額が変動する仕組みになると見込まれています。現時点で詳細は明らかではありませんが、低所得者支援や子育て支援を目的とした制度設計が想定されています。
米国型モデルが示す「なだらかな境界線」
仮に日本が米国型の制度を参考にする場合、所得金額と子どもの数などに応じて控除額が決定される仕組みとなります。米国では「Earned Income Credit Table(EICT)」という表を用い、所得と家族構成に応じた控除額が細かく設定されています。
この制度の特徴は、いわゆる「壁」が存在しない点にあります。所得が増えるにつれて控除額は段階的に増加し、一定の水準で頭打ちとなった後、徐々に減少していきます。そのため、ある所得を境に控除が突然ゼロになるような急激な断絶は生じません。
日本で導入される場合には、簡素化の観点から所得区分が粗くなる可能性がありますが、それでも急激な「控除の壁」ではなく、なだらかな減少カーブが採用される可能性が高いと考えられます。
問われるのは「減税規模」と財源
最大の論点は、給付付き税額控除による減税額をどの水準に設定するかです。
食料消費税ゼロは期間限定の措置でしたが、給付付き税額控除は恒久的な制度となる可能性があります。そのため、安定的な財源の確保が不可欠です。
もっとも、消費税減税のように広範な層に恩恵が及ぶ政策とは異なり、対象が限定されることから、1人当たりの減税額は相対的に小さくなると見込まれます。
「境界線」は消えるのか、それとも残るのか
給付付き税額控除の本質は、「誰までを支援対象とするのか」という線引きにあります。ただし、その線引きは従来の制度のような明確な“壁”ではなく、所得に応じて緩やかに変化する設計になる可能性があります。
今後の制度設計次第では、「境界線」が目立たない形で組み込まれる一方、実質的な負担感の差が別の形で浮かび上がる可能性もあります。6月の中間とりまとめに向けた議論の行方が注目されます。
矢内一好
国際課税研究所
首席研究員
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