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売るほうが損という可能性も…政策保有株式を売却しづらい理由
それでは、なぜ売却が進まないのかを考えてみます。売却しづらい理由には、経済的な側面だけでなく、取引関係やガバナンス、さらには非上場株式の特殊な性質といった多岐にわたる要因が存在します。それらを一つひとつひも解いていきましょう。
1.「売却損」を計上するリスク
まず、最も懸念されるのが、売却損の計上リスクです。保有株式が購入価格を下回る場合、売却すると会計上損失を計上することになり、企業財務や市場評価に悪影響を及ぼす懸念があります。特に多額の売却損は、売却決断を困難にします。
2.取引先との関係悪化
政策保有株式は、単なる投資目的ではなく、企業間の強固な協力関係や安定した取引の証しとしてとらえられてきました。そのため、保有する株式を一方的に売却することは、長年の信頼関係を損ねる行為と受け取られかねません。これにより、既存の取引が減少したり、将来的な共同事業や協業の機会を失ったりするのではないかという強い懸念が生じます。
特に、相手企業が自社にとって重要な取引先である場合、その影響は企業の存続にも関わるほど甚大です。経営者は、目先の売却益よりも、安定した取引関係の維持を優先する傾向にあります。
3.「物言わぬ株主」の喪失
ガバナンスへの影響としては、特に「物言わぬ株主」の喪失という点が大きいでしょう。政策保有株式を持つ企業は、多くの場合、株主総会において経営陣に賛成票を投じ、安定的な株主として機能してきました。これにより、経営陣は短期的な業績変動や外部からの圧力に左右されず、中長期的な視点に立って経営戦略を推進しやすいというメリットがありました。しかし、政策保有株式を売却することは、こうした安定株主を失うことにつながります。
このようにして株主構成が不安定になることを恐れる経営者は少なくありません。特に、近年増加している「物言う株主」からの要求や批判が強まることを懸念し、安易な売却に踏み切れないという実情があります。

