売ったら損するかも、取引先との関係が悪くなるかも…日本企業が「政策保有株式」の売却を恐れる〈日本ならでは〉の事情

売ったら損するかも、取引先との関係が悪くなるかも…日本企業が「政策保有株式」の売却を恐れる〈日本ならでは〉の事情
(※写真はイメージです/PIXTA)

純粋な投資目的ではなく、企業が取引先との関係維持や強化といった投資以外の目的で保有する株式のことを、「政策保有株式」といいます。近年、海外企業からの圧力もあり、一部の企業は政策保有株の売却に動いている一方で、多くの企業がなかなか売却に踏み切れない背景には、日本ならではの事情がありました――。喜多洲山氏の著書『非上場の政策保有(持ち合い)株式を賢く売却する方法』(幻冬舎メディアコンサルティング)より、くわしくみていきましょう。

 ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中! 

トランプ劇場と超富裕層課税 増税か、減税か――税制が映し出すアメリカの真実
奥村眞吾(著)+ゴールドオンライン(編集)

シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!

 

売るほうが損という可能性も…政策保有株式を売却しづらい理由

それでは、なぜ売却が進まないのかを考えてみます。売却しづらい理由には、経済的な側面だけでなく、取引関係やガバナンス、さらには非上場株式の特殊な性質といった多岐にわたる要因が存在します。それらを一つひとつひも解いていきましょう。

 

1.「売却損」を計上するリスク

まず、最も懸念されるのが、売却損の計上リスクです。保有株式が購入価格を下回る場合、売却すると会計上損失を計上することになり、企業財務や市場評価に悪影響を及ぼす懸念があります。特に多額の売却損は、売却決断を困難にします。

 

2.取引先との関係悪化

政策保有株式は、単なる投資目的ではなく、企業間の強固な協力関係や安定した取引の証しとしてとらえられてきました。そのため、保有する株式を一方的に売却することは、長年の信頼関係を損ねる行為と受け取られかねません。これにより、既存の取引が減少したり、将来的な共同事業や協業の機会を失ったりするのではないかという強い懸念が生じます。

 

特に、相手企業が自社にとって重要な取引先である場合、その影響は企業の存続にも関わるほど甚大です。経営者は、目先の売却益よりも、安定した取引関係の維持を優先する傾向にあります。

 

3.「物言わぬ株主」の喪失

ガバナンスへの影響としては、特に「物言わぬ株主」の喪失という点が大きいでしょう。政策保有株式を持つ企業は、多くの場合、株主総会において経営陣に賛成票を投じ、安定的な株主として機能してきました。これにより、経営陣は短期的な業績変動や外部からの圧力に左右されず、中長期的な視点に立って経営戦略を推進しやすいというメリットがありました。しかし、政策保有株式を売却することは、こうした安定株主を失うことにつながります。

 

このようにして株主構成が不安定になることを恐れる経営者は少なくありません。特に、近年増加している「物言う株主」からの要求や批判が強まることを懸念し、安易な売却に踏み切れないという実情があります。

 

 

次ページ一社が売却すると“連鎖”する恐れも

※本連載は、喜多洲山氏の著書『非上場の政策保有(持ち合い)株式を賢く売却する方法』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

非上場の政策保有(持ち合い)株式を賢く売却する方法

非上場の政策保有(持ち合い)株式を賢く売却する方法

喜多 洲山

幻冬舎メディアコンサルティング

非上場の政策保有株式を“眠らせたまま”にしないために——。 近年、金融庁や東京証券取引所を中心に、政策保有株式の削減が進められています。しかしながら非上場企業の政策保有株式に関しては、削減が進んでいないのが現…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧