空室や厳しい値下げ交渉に悩んでいるビルオーナーであれば、まずは自分のビルの問題点を把握する必要があります。そのためには、競合となるビルをピックアップ、厳しい目で見て歩き、徹底的に比較検討することが重要です。今回は、自分のビルを競合物件と比較する際の物件情報の集め方について解説します。

貸しビル専門の仲介業者からの情報収集が最も効率的

競合する物件の条件を設定したら、次は実際の物件情報を収集、自分で歩いて確認する作業を行います。物件情報の収集法には以下の3種類があります。

 

①近いエリアは自分で歩いて探す
自ビルの最寄り駅周辺なら、「テナント募集中」などの表示を手がかりに自分で歩いて探す手があります。たいていの場合、募集中の表示には問い合わせ先や物件概要などが記載されていますから、後刻、それを基に詳細な情報を問い合わせ先不動産会社のホームページなどから入手します。

 

また、最寄り駅周辺の不動産会社店頭の広告からテナント募集中のビル情報をチェックするというやり方もあります。この場合、チラシなどが掲出されていれば、かなり細かい情報がそこで入手できます。近くにあるビルなら、不動産会社店頭の表示を見るだけでなく、現地へも足を運び、自分の目で確かめます。

 

ちなみに自ビル周辺エリアのビル事情、空室状況は本来、空室がない時期でも把握しておきたいものです。近隣に自ビルと競合しそうな新築ビルができたり、空室が増加しているなどといった状況は、いつ自ビルに影響を与えるかわかりません。周囲の状況を知っておくことが、不測の事態に備えるためには必要です。

 

②貸ビルを扱っている不動産会社のホームページなどを見て探す
最近はインターネット上でビル情報も数多く見られるようになりましたから、これを利用します。地域、広さ、賃料などで絞り込み検索をし、競合しそうなビルを抽出。立地、面積や賃貸条件、設備といった詳細情報をチェックします。掲出されている場合には図面も見ておきましょう。

 

③貸ビル専門の仲介業者に情報をもらう
一番効率的で信用のおける情報を入手できるのはこの方法。ただし、こうした会社との付き合いがない場合には難しいことが多いので、どのオーナーでも情報が入手できるわけではありません。

自分のビルと条件が近い順に50~60物件は見て歩く

物件をピックアップしたら、次はそれを絞り込む作業です。ここまでの作業で抽出した物件のうち、条件が近い順に50~60物件を見て歩くのです。その際には自分がオフィスを探す会社経営者の気持ちになって、最寄り駅からビルまで、建物の周囲、外観、エントランス、エレベーター内、エレベーターホール、トイレまでを隈なくチェック。建物の周囲を一周ぐるりと歩いてみることも大事です。築年数が離れているビルについては本当に競合するかの検討もします。

 

このときに大事なのは自分で歩くこと。車で通りすがりに見るだけでは、ビルの本当の姿はわかりません。面倒だと思わず、なかへ入って自分の五感でビルの価値を確認してください。その上で、さらに物件を20~30物件にまで絞ります。ここに残った、この20~30物件が本当に自分のビルと競合するビルとなります。

 

次回では、物件を一覧表にして順位をつける作業の解説を行っていきます。

本連載は、2010年12月21日刊行の書籍『空室を抱える中小オフィスビルオーナーのための満室ビル経営』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

空室を抱える 中小オフィスビルオーナーのための 満室ビル経営

空室を抱える 中小オフィスビルオーナーのための 満室ビル経営

佐々木 泰樹

幻冬舎メディアコンサルティング

サブプライム問題、リーマンショックを経て、悪化した賃貸オフィスビル市場は依然厳しく、地方都市では都心以上に苦しい状況にあります。 そのような中、特に中小規模のオフィスビルは、バブル期以前に建った築20年以上のビル…

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