「後悔はない。でも怖い」
恵子さんはしばらくパートを続けるつもりだと言います。
「働けるうちはいいんです。でも70代になったらどうなるか」
医療費、家賃、生活費。将来の見通しは楽観できません。
「後悔しているわけじゃないんです。でも…怖いですね」
まとまった資金を一度に使う行動は、高齢期には珍しいものではありません。相続や退職金などの臨時収入は心理的に「余裕資金」と認識されやすい傾向があります。
しかし金融広報中央委員会の調査では、60代単身世帯の金融資産分布はばらつきが大きく、中央値は210万円にとどまります。多くの高齢単身者にとって、数百万円単位の資金は老後の安全余力そのものでもあります。
恵子さんの部屋には、旅先の写真が並んでいます。
「見返すと幸せな気持ちになります」
それでも彼女は現実を見据えています。
「今は、もう一度貯め直す時間だと思っています」
相続した400万円は消えました。しかし残ったものもあります。
「自分の人生を生きた、という感覚です」
老後資金は、安心のための資金でもあり、人生を使うための資金でもあります。どちらを選ぶかは、人それぞれの価値観に委ねられています。
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