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税負担調整のために設けられている「GST・HSTクレジット」
カナダの消費税制度には、税負担の逆進性を緩和するための給付制度も設けられています。その代表的な制度が、「GST・HSTクレジット」です。
同制度は、生活必需品にかかるGSTの負担を軽減する目的で、GST導入と同時に始まったものです。いわゆる「給付付き税額控除」にあたり、税率の引き下げやゼロ税率よりも逆進性の緩和に効果的であるとされています。
ただし、制度内容の拡充に伴い、2026年7月に「食品・生活必需品給付金(Canada Groceries and Essentials Benefits)」へと改称される予定です。
改正後の「食品・生活必需品給付金」では、低所得世帯への生活支援がより明確に打ち出されています。物価上昇や生活費の増加を背景に、給付水準が引き上げられるためです。
たとえば、夫婦と子ども2人の家庭の場合、2026~2027年度の給付額は1,086ドル(約12万円)です。さらに、2026年上半期には一時金として控除額の50%相当額が支給され、同年7月からは四半期ごとの給付額が25%増額されます。
2026~2027年度における増額分(上半期の一時金および25%増額分)の合計は805ドル(約9万円)となり、最終的な給付総額は1,891ドル(約21万円)にのぼります。
申請要件と事務手続き
申請要件は、原則19歳以上。給付額は、家族構成と世帯所得に応じて決定されます。
また、カナダでは、社会保障番号(SIN)が納税者番号として用いられています。所得のある人は、納税申告書の付表にある給付金請求欄にチェックを入れて申請します。また、所得がない場合でも、給付を受けるためには税務申告を行う必要があります。児童手当を受給している世帯については、別途申請は不要です。
これらの事務手続きはカナダ歳入庁(CRA)が担当します。なお、給付額が納税額と相殺されることはなく、給付は独立して支給されます。
「減税」ではなく「給付」で逆進性を補正するカナダの税制
このように、カナダの消費税制度では、税率そのものを大きく動かすのではなく、給付付き税額控除や給付金を通じて逆進性を緩和する仕組みが採用されています。
税率を一律に引き下げると、高所得者にも同じ割合で恩恵が及びます。一方、所得に応じて給付額を調整する制度であれば、政策効果を低所得層に重点的に配分することが可能です。「食品・生活必需品給付金」は、こうした考え方に基づく逆進性対策の一例といえます。
連邦と州の二層構造という複雑な税制のもとで、給付制度を通じて実質的な負担調整を行う点が、カナダの消費税政策の大きな特徴です。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
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