通帳に捺印した印鑑で「誰が稼いだお金か」を判断
重要度 ★★★★★
認印。家族に一つ or 一人に一つ持つなら、どっち?
答え:認印は一人に一つ! その人専用の印鑑を作りましょう。
お客様のご自宅に伺うとき、数えきれないほどの印鑑が出てくる家もあれば、そうでない家もあります。
「印鑑がたくさんあって、誰が誰のなんて決まってないよ」
「一つの認印を家族みんなで使っているわ」
一人一つ持っている実印は、遺産分割協議書や不動産の売買など、「ここぞ!」というときに押すとても大切な印鑑なので、「実印が必要です」というとき以外は押さない方が無難です。
なお、相続税の申告書に押す印鑑は、実印ではなく認印(印鑑を押す書類の内容や、事柄について「目を通しました」「認めました」ということを表すために押す印鑑。個人を証明する力は実印より劣る)で十分です。
では、認印は実印と同じように一人一つの方がよいのでしょうか。次の「事件簿」をみていきましょう。
<税理士は見た! 印鑑事件簿>
祖父の相続がすんで、ホッとひと息ついたのもつかの間。税務署からあなたの家に「相続税の申告が間違っているかもしれません」と、税務調査の連絡が入りました。
調査当日。最初は税務署員からの世間話で始まりなごやかなムードですが、すでに税務調査は始まっています。
税務署員 ◯◯さん(祖父)の使っていた印鑑をすべて出してください。
あなた 印鑑ですね、わかりました。
タンスの奥から祖父の印鑑を持ってきて・・・。
税務署員 では、ここにその印鑑をすべて押してください。
あなた はい。これでよろしいですか。
一つ一つ印影(押印した形)を確認する税務署職員。
税務署員 ・・・そういうことですね。
あなた えっ?
税務署員 お孫さんの名義になっているこの通帳ですが、◯◯さんの相続財産として申告する必要がありますよ。
あなた えーーーーーーっ!
祖父母や父母がかわいい孫・子どものために貯めている預金、いわゆる名義預金。税務署は「誰が稼いだお金か」で判断するため、祖父が稼いだお金なら祖父のお金、父が稼いだお金なら父のお金、という見方をします。
正しい贈与方法で孫や子どもに贈与している場合を除き、そのお金は「稼いだ人」の相続財産になるため、子どものことを思っての素敵な贈りものであるはずの名義預金が、一転して相続税の対象になってしまうのです。
この名義預金の判断基準の一つが「印鑑」です。
祖父の印鑑で作った通帳に祖父が貯めている、父の印鑑で作った通帳に父が貯めている。税務署の職員が「それはあなたの財産ですよね」と言いたくなる気持ちもわかりますね。印鑑が孫・子ども専用のものであれば必ず相続税の対象から外れるというわけではありませんが、印鑑は一人一人専用のものが望ましいです。
贈与は「名義預金」に疑われない手順で行う
「もしかして、あれは名義預金?」と思ったら・・・、
ステップ① もらう人の印鑑を作る
↓
ステップ② もらう人の銀行口座を作る
↓
ステップ③ できれば贈与契約書を作る(もらう人が未成年者のときは親権者がサイン)
↓
ステップ④ お金を振り込む
↓
ステップ⑤ 通帳はもらった方が管理する
この手順で贈与を行い、相続財産から預金をきちんと切り離しておくことをおすすめします。たかが印鑑、されど印鑑。認印も、実印と同じように一人に一つずつ持つようにしましょう。