今回は、過去の税金関係の書類はいつまで保管しておくべきかを見ていきます。※本連載は、久野綾子税理士事務所の代表税理士・久野綾子氏の著書『相続貧乏になりたくなければ親の家を賢く片づけましょう』(アチーブメント出版)の中から一部を抜粋し、実家の「モノ」の片付けに関するポイントをQ&A形式で解説します。

立て続けの相続があった場合に使える「相次相続控除」

重要度 ★★☆☆☆

過去の税金関係の書類。

10年たったら捨てる or とっておく

賢いのは、どっち?

 

答え:10年たっても、次の相続まではとっておく方がお得!

できれば20年は捨てずにとっておきましょう。

 

「相続税申告書など、税金関係の書類はいつまでとっておけばいいのかわからない」という方も多いと思います。整理収納のプロからすれば、片づけたい! と思われるかもしれませんが、相続税の税務調査が入る可能性がある方は、20年はとっておいてほしいというのが、税理士としての本音です。

 

<3年とっておくべき理由>

税務調査が入るタイミングは、相続税の申告書の提出期限(亡くなってから10か月以内)から1〜2年後。税務調査に備えて、3年間は必ずとっておきましょう。

 

<5年とっておくべき理由>

「相続税を過払いしてしまった!」など、後で申告書の間違いに気づいたとき、相続税の申告書の提出期限(相続が発生してから10か月)から5年以内であれば、相続税の還付を受けることができます。

 

<10年とっておくべき理由>

「8年前、祖父の相続で土地をもらって相続税を払ったのに、今度は父の相続でまた相続税を払わないといけない・・・」

 

といったことのないように、10年以内の相続で相続税を払った方が亡くなったときには、相続税が少し安くなる相次相続控除という制度が使えます。この制度は10年前の相続まで使えるため、10年間は相続税申告書をとっておくとお得です。もし、捨ててしまったり、手元にないときは、相続税申告書を提出した税務署に行って見る(閲覧する)ことはできますが、コピーはできません。相続税申告書を見るためには、

 

●相続税申告書に名前を書いた人が全員で税務署に行く

●行けない人がいるときは、委任状と印鑑証明(本人しかとれない書類)が必要

 

上記にあげた条件を満たす必要がありますし、ましてや、どこを見れば相次相続控除の規定が使えるのかわからないため、結局は税理士に頼むことになるケースがほとんどです。印鑑証明などをとる手数料、税理士にお願いする手数料・・・。「10年はとっておけばよかった!」と思うはずです。

遺産分割内容が分かるなど、20年とっておくメリットも

<20年とっておくべき理由>

相次相続控除の規定は10年。10年たったらさすがに捨てても・・・と思うかもしれませんが、10年以上とっておくといい理由は、遺産分割の内容が分かること。何をどう分けたかがわかることで、ムダな相続税を減らすことができるのです。

 

たとえば、15年前に祖父が亡くなり、今年、祖母が亡くなったとします。土地や建物、預金、株など主な財産については、名義変更の手続きをしているので、誰がもらったかということはわかりますが、たとえば、庭や門塀など、名義変更の手続きがないものは、「誰がもらったのか」が分からなくなってしまいがちです。

 

15年前の相続税申告書に「庭は息子がもらう」と書いてあれば、祖母の相続財産ではありませんから、相続税の対象から外れます。

 

相続税のかかる家で、家族間の通帳のやりとりが頻繁に行われているようなときは、税務調査のお助けアイテムになる可能性もありますので、相続税申告書は20とっておくと安心です。

相続税申告書以外にもとっておくべき書類とは?

相続税申告書のほかにもとっておくといい税金関係の書類は、次の4つです。

 

<確定申告>

●土地を貸している場合、どの土地を誰にいくらで貸しているかがわかる

●過去に保険料をすべて払っている保険(払い済みの保険)の請求漏れがないか確認

できる

●医療にかかるお金が多かったことを証明する資料になる

 

<源泉徴収票>

●どれくらい給料をもらっていたか知ることができる

 

<贈与税申告>

●「名義が変わっているが、贈与税の申告をしたのだろうか」というときに確認できる

●相続時精算課税を選択しているときは、相続税を申告するための資料として必要

 

<固定資産税の納付書>

●「実際は畑なのに、宅地として固定資産税がかかっている!」など、固定資産税を払いすぎていないかどうか、確認できる

 

これらの税金関係の書類は、20年とっておくと安心です。

本連載は、2015年3月3日刊行の書籍『相続貧乏になりたくなければ親の家を賢く片づけましょう』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続貧乏になりたくなければ 親の家を賢く片づけましょう

相続貧乏になりたくなければ 親の家を賢く片づけましょう

久野 綾子

アチーブメント出版

相続で避けて通れない、何かと話題の「実家の片づけ」 実は片づけ方によって相続時に税金がかかる・かからないが決まること、ご存じでしたか? 通帳や保険、家具、そして家と土地…。「親の家を片づけ(おやかた)」ているうち…

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