自由と引き換えの「自己責任」
部屋はきれいに片付いていました。洗濯も掃除も行き届いています。ただ、食生活だけが極端に簡素でした。
「一人だとさ、料理って面倒なんだよ。作っても余るし」
真理子さんは言います。
「体が心配なんです。でも、口出しすると嫌がる。どう見守ればいいのか分からなくて」
自治体には、高齢者向けの配食サービスや見守り支援、生活支援事業があります。しかし、健一さんは利用していません。
「まだ自分でできるからいい」「世話になるほどじゃない」
介護保険制度も、要介護認定を受けなければサービスは本格利用できません。元気なうちは、制度の外側にいる時間のほうが長いのが実情です。
「倒れたら、その時はその時だよ」
その言葉に、真理子さんは返す言葉を失いました。
帰り際、父は玄関まで見送って言いました。
「心配するな。ちゃんと生きてる」「お前はお前の生活をやれ」
突き放すようでいて、どこか優しい口調でした。
「理想の老後じゃないかもしれない。でも、“本人が納得している老後”ではあるんですよね」
独居高齢者の暮らしは、外から見れば「質素」「心配」に映ることがあります。しかし本人にとっては、「干渉されない自由」「自分で決める生活」である場合も少なくありません。
重要なのは、危険な孤立と、自立した単身生活を混同しないことです。連絡が取れる関係、緩やかな見守り、いざという時の相談先――それだけでもリスクは大きく下がります。
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