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失った2,300万円の代償…退職金投資デビューの危うさと対策
千葉君の投資話から3年が経過した先日、野島さんと個別相談でお会いしました。ちょうど不動産クラウドファンディングが話題になっている頃でもあり、「いつでもこういう話はあるんですね」というところからのスタートでした。
投資の経験のない人が、受け取ったすべてのお金を退職金につぎ込む「退職金投資デビュー」は、典型的な失敗例です。不動産クラウドファンディングという手法自体が悪いのではなく、一つの案件に資産の大部分を集中させてしまうこと、そしてその情報の裏取りを怠ったことが、大きな敗因でした。筆者は個別相談に多数対応していますが、「投資で失敗してしまった」という後日談のなかによくみられるケースでもあります。
今回の話、新東名の建設はまぎれもない事実です。千葉君の得た情報も事実ではない箇所もあるとはいえ、まったくの詐欺話ではないでしょう。しかし、投資した土地の値段が上がるという保証はなかったのも事実であり、お金が野島さんに返ってくることはありませんでした。
今回の事態を回避するポイントは、「どこからが証明されていない内容なのか」を常に意識することです。繰り返しますが、新東名の建設は紛れもない事実。建設計画も国が承認したものです。一方で現在工事がトンネルの開通で苦戦していることは、調べればわかります。そして道の駅の計画は、あくまで生徒からの情報であり、客観性・立証性を保ってはいないものです。
この状況下で、投資をする前に誰かに相談することは必須です。また投資するとしても、いきなり全額は避けるべきでしょう。野島さんは元教師だけあって、「勉強は得意」でした。ただ、勉強ができる人でも投資で成功するとは限らないのです。
残された貯金で老後破産だけは何とか回避
野島さんは退職金の2,300万円をすべて溶かしてしまいました。先般、道の駅の運営会社から破産通知が届き、お金が返ってくる可能性はなくなりました。「夢なら覚めてくれ……」と野島さんは何度も願ったことでしょう。
千葉君とつながったSNSはブロックされたまま、電話をかけても出ることはありません。ほかの生徒に投資の事実を隠してさりげなく聞いたところ、「わからないです。消息不明です」とのこと。野島さんだけでは、ないのでしょう。
ただ、これまで堅実な暮らしをしていたこともあり、貯金は2,000万円残りました。夫婦合わせての月の年金額は約30万円。2人の娘も既に巣立っているだけに、老後破産する状況には至りませんでした。
しかし、退職金の2,300万円があれば、温泉まわりをするなど余裕を持って楽しめたはず。幸せなことに奥様と節約旅行には出かけますが、新東名の方向を選ぶことはありません。「高速道路は何も悪くはないのですけどね」とそうつぶやいた姿が印象的でした。
工藤 崇
株式会社FP-MYS代表
FP(ファイナンシャル・プランナー)
IFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)
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